SORCERER GIRL AMBITIOUS








その後、一行は駆けつけた村長たちと一緒に、ひとまず村に帰ります。
正攻法でミノタウロスに勝つのは難しいとわかっているだけに、
逃げるかどうかも含め、策を練ることにしました。
なお、ゴブリンシャーマンとの戦闘後、一行は簡単に周辺を探索し、
(レンジャー2人が惨敗したものの、)平目で11を出したフアナが、
背後から切りつけられたゴブリンの死体を発見。位置からして、
ミノタウロスから逃げようとして追いつかれたゴブリンの末路のようでした。
ひとまず、ミノタウロスが攻めてくればその場で迎え撃ち、作戦がまとまれば
こちらから打って出ることにし、村長の家で作戦会議を開きます。






トゥエリ :領主に助けを呼びに行くというのはどうでしょうカ?

村長   :それは難しいです。ここから片道で2日はかかりますし……。

オルフ  :助力が得られるのならゴブリンの時点でやっているでしょう。
      今となっては日程的にも無理がありますし。もちろん、
      冒険者の店に戻るのは論外ですね。戻っている間に村は全滅でしょう。

フィーエル:それ、かわいそう。戦おう!

レイディア:待ちなさい。人数揃わなきゃ無理よ。

フアナ  :……6人で正面から戦ったら、死者は……0〜2人……?

ディース :くししし。具体的だなー。

オルフ  :笑い事ではないと思いますが。

レイディア:勝てない相手じゃないのよ。死人が出る確率が高いってだけで。

フアナ  :……。

レイディア:とりあえず、6人の方針まとめるわよ。いいっすよね?

村長   :はい。こちらは伏してお願いする立場ですので。

レイディア:今の時点で、戦いたいって人、挙手。

フィーエル:あう! ←元気良く挙手

ディース :危ねーのはわかってるけど……。 ←挙手

レイディア:……。 ←周りを見回しながら、挙手

トゥエリ :レイディアさんっ!?

レイディア:ここには元々名前上げに来てる。覚悟はできてるから。

オルフ  :なるほど。確かに、名前は上がるでしょうね。生きて帰れれば。

トゥエリ :3人では……4人でも絶対に無理デスよ……。

レイディア:誰だって死にたくはないからね。無理強いはしないわ。

トゥエリ :確率は高いにこしたことないデスからね。←挙手

レイディア:ありがと。見返りはないけどね。

トゥエリ :覚悟の上デス。

ディース :よし。あとは、戦力の高い2人だな。

フアナ  :……。

オルフ  :仮にわたくしが参加しなければ、戦うのをやめますか?

レイディア:甘えだってわかってるけど、「はい」って言うわけないわよね?

オルフ  :意地悪はお互い様です。 ←挙手

ディース :あと1人。

フアナ  :…………。

レイディア:安心して。戦力だけど、絶対必要ってわけじゃないわ。

フアナ  :行く。

レイディア:手挙げてないから、キャンセルできるわよ?

フアナ  :……。 ←左手を挙げる

レイディア:決まりね。じゃ、作戦考えるわよ。

村長   :ありがとうございます。

フアナ  :……。

トゥエリ :結局、こうなっちゃうんデスね……。

レイディア:ゴブリンの時点でみんな温存モードだったでしょ?(笑)

トゥエリ :覚悟はしてましたけど、こんなに早くそのときが来るなんて……。(遠い目)

オルフ  :あやうく、当初依頼された敵すら討ちもらすところでしたから。(汗)

ディース :人間、死ぬときゃ死ぬって。策はあった方がいいけどな。

オルフ  :神殿の部屋にお酒を隠したままなんですが。

トゥエリ :飲んだらいけないという戒律はないと思いましたけど、神官でしょう?

オルフ  :いやー。昔の癖でつい……。

レイディア:(黙って親指を立てる。)

オルフ  :(黙って親指を立て返す。)

トゥエリ :(ダメな人たちがいますね……。)

レイディア:とりあえず、狙われた前衛は防御専念として……。

オルフ  :相手の知能が低いのは幸いでしたね。
      狙われた方に、わたくしが敏捷度0でキュアー・ウーンズを。

ディース :くししし。オルフが死んだら全滅だよな?

フアナ  :ふふふ。(笑)

トゥエリ :(そこは笑うところなんデスか……?(汗))

オルフ  :死なないように気をつけます。(笑)

トゥエリ :(そこも笑うところなんデスか……?(汗))

レイディア:オルフ、回復何発?

オルフ  :未熟者ゆえ、2発が限界です。
      精神力が13ですので、回復無しでトランスファーだと、12点ですね。

トゥエリ :確かに、精神力の融通は魔法使いにとってはありがたいデスが。

フアナ  :……回復使えるのは1人だけ。キュアー・ウーンズ、優先がいい……。

オルフ  :了解しました。

レイディア:じゃあ、狙われた以外の前衛は全力攻撃でいいっすか?

フアナ  :でも、「なぎ払い」来たら死ぬ……。

フィーエル:ゴブリン、傷、横、なかった。多分、大丈夫。

レイディア:そう断言はできないけど、こっちが知力高いから敵の行動は読めるし。
      来たら回避専念で、全員少しずつ後ろに下がるわよ。

トゥエリ :2ラウンドに1回しかなぎ払えなくなるわけデスね。

ディース :ラウンド開始時には、ミノの周りに敵がいねーしな。

レイディア:そゆこと。

ディース :じゃ、「なぎ払い」はとりあえず警戒しないでいっかー。
      すっきり全力攻撃で!

レイディア:で、勝ち目がないと判断した場合の行動は?

フアナ  :全力で村に逃げて……あ……ミノタウロスの移動速度、15もある。
      ……わたし以外は……逃げられない。

レイディア:フアナが最後に残ったら、逃げていいわ。絶対ダメージ通らないし。

フアナ  :……うん。

オルフ  :罠をしかけてみるというのはどうでしょう?

ディース :無理無理。シーフいねーし、レンジャー実質1人だし。

レイディア:う……。(言い返せない……。) ←器用度ボーナス0

フアナ  :……村長さん……村に弓の人、いる?

村長   :いえ、農村ですので……。

ディース :あとは、油でもぶっかけて燃やすか?

レイディア:洞窟でそれやるとして、酸欠とか大丈夫?

G   M:洞窟の構造は村長さんに聞いてますね。
      では、セージ技能+知力ボーナスで。難易度5。
      それぞれ10・10・11・12・6・9ですか。
      (こちらの出目が9で、目標値14。全員失敗です。)
      全員、危ないことになる可能性はあるけど、断定はできないと思いました。

フアナ  :……わからない。リスクは高いと思う。……あと、いいこと考えた。

トゥエリ :名案だといいけど……。

フアナ  :……村長さんの家に誘い込んで……報酬の家ごと燃やす……。

フィーエル:???

レイディア:そういえば、家くれるとか言ってたわね。(笑)

村長   :……………………それで村が救われるのであれば。(遠い目)

オルフ  :……しかし、ダメージ1回分くらいで強引に突破されるのではないでしょうか?
      敵より速いのがフアナ君だけですし、効率が悪いでしょう。

フアナ  :……そうだね。残念賞……。

トゥエリ :結局、可能なら洞窟まで攻め込みますカ?
      それとも、村で迎え撃ちますカ?

レイディア:それは作戦次第ね。

フアナ  :……防護点10に、モンスターレベル6。
      ……生半可な小細工は通じないかも。

オルフ  :移動速度が15もありますし、村まで誘い込んで総力戦というのは、
      村人の被害が大きくなるかもしれませんね。

レイディア:村人総出で村の周りに穴でも掘る?

ディース :掘ってる途中にミノタウロス来たら終わりだなー。2〜3人は死ぬぞ。

レイディア:そっかー……。

オルフ  :では、洞窟の入り口で我々が陣形を組んで、
      前衛が防御を固めつつ、後衛が穴を掘るというのはいかがでしょう?
      これならば、途中で襲われても対処のしようがあると思いますが。

フアナ  :……後衛が杖に持ち替える1ラウンドが、もったいない……。

トゥエリ :あと、穴を掘っている間に行き違いで村を襲われる可能性があります。

レイディア:結局、相手が動いても、私たちにはわからないのよねー。

フアナ  :……そこがネック……難しい……。

ディース :留守の間に何かあったら知らせてもらおうにも、普通に追いつかれるよな。

トゥエリ :戦闘能力があるゴブリンですら、あのざまデスからね。

フアナ  :……速いのに……牛歩……。

オルフ  :結局、正攻法で戦いを挑んで、エンチャント・ウェポンと
      エネルギー・ボルト主体で組み立てるしかないのですかね?

ディース :そーだな。せめてストーンサーバント立てられりゃ、全然違うんだけど。

オルフ  :………………。(複雑な表情)

レイディア:何、その顔? もしかして、使えるとか……?

オルフ  :いえ、全く使えません。すみません。

レイディア:別に謝らなくていいわよ。

ディース :スリープ・クラウドは消費する精神力の割に効きづらいし、
      効果もいまいちだな。強すぎる敵には向いてない。

G   M:さて、そろそろ日が傾き始めますが。

レイディア:じゃあ、オルフの案で行く? フィーエルはわたしたちのサイン見て行動ね。
      本番はそんな余裕なさそうだけど。

フィーエル:(こくん)

フアナ  :……ミノタウロスに出会うまで、わたしたちは……村と洞窟を往復。

オルフ  :わたくしたちが全滅した場合、しばらく餌には困らないでしょう。
      明朝までに誰も帰らなければ、先ほどお渡しした手紙を例の冒険者の店へ。
      腕に覚えのある篤志家の冒険者の助けが得られる可能性も、
      ゼロではないでしょうから……。

村長   :…………わかりました。……どうかお気をつけて……。

ディース :しけた顔してんじゃねーよ。景気付けに、俺が1曲歌ってやろうか?
      平和な温泉街に突如巻き起こる、連続猟奇殺人事件の歌だ。
      行方不明者も出るぞ。

レイディア:お前、空気読めよ。

トゥエリ :まったくデス。

レイディア:じゃあ、ここで一発凄いの倒して、名を上げるわよ!!

フアナ以外:オー!

フアナ  :おー。 ←やる気なさそうに





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