はじめてのぼうけんしゃさん
G M:場所は、レイディアの通う賢者の学院の教室。
レイディア:実は、この前、古代王国の遺跡で、物凄い宝物を見つけちゃってねー。
学生A :また口だけか?
学生B :特待生の癖に単位落としまくりの奴が何言ってるんだよ。
レイディア:見つけたったら! 本当に見つけたんだから。
学生A :どんな宝だよ?
学生B :いいからそれを見せてみろよ。信じてやるから。
レイディア:ふん。凄すぎて、言うのも見せるのももったいないわ。
学生A :やっぱり口だけか。
学生B :大体、一人で遺跡なんかもぐれるわけねーだろ。
レイディア:それはもう私を慕う冒険者仲間がいるから。
学生A :それもうそ臭いな。
学生B :仲間の前に友達探せよ。
レイディア:友達いるもん。ディースとか、トゥエリとか。あと、フアナも?
学生B :俺に聞くなよ。
学生A :蛮族のトゥエリには、勉強教えてもらってるんだよな?
学生B :ディース……金持ちの癖に正魔術師にジュースおごらせようとする馬鹿か。
学生A :フアナは天才変人エルフか。ろくなのいねーな。
レイディア:(うう……言い返せない。)
学生A :くだらん嘘並べてる暇があったら使い魔くらい持てよ、特待。
学生B :お前と同期の特待は最低でもライトニングは使えるぞ。
レイディア:魔法が使えないあんたらには言われたくない!
親のすねかじりのくせに偉そうに。
学生A :親の金も実力のうちだろ。
学生B :お前と違って学費払ってるからいいんだよ、特待。
学生A :適性試験の点数俺の3倍だって話だけど、天才は気楽でいいよな。
レイディア:私だってそれなりに苦労してるわ!
二人同時に:嘘つけ!
学生A :お前のような才能だけで使えない奴の学費を俺らが出してるんだよ。
学生B :特待の癖にろくな魔法使えねー穀潰しが。
学生A :大体、なんで俺らが狩人の娘と一緒に勉強しないといけないんだよ。
学生B :お前の使える魔法、全部コモン・ルーン(共通語魔法)じゃないのか?
レイディア:初歩の古代語魔法も使えないお前らなんかと一緒にするなっ!
学生A :ちょっとばかし魔法が使えるからって調子に乗りやがって。
学生B :ここ金持ちの息子多いから、婿探しに来たんじゃねーのか。
レイディア:ふん。上位古代語使えない奴は発想が下品ねー。
学生A :なにをー!
学生C :まあまあ、みんな落ち着いて。休み時間とはいえ、ここは教室だろ。
話の発端になった物凄い宝物とやらを見せてもらえば、
どっちが正しいかわかるじゃないか。
学生B :……一理あるな。
レイディア:(あう……言い返せない。)
学生A :じゃあ、次に会うときに持って来いよ。
学生B :期日は明日以降でいいからな。ま、永久に無理だろうし。
レイディア:上等じゃない。受けて立つわ。
学生C :いずれ導師になられる方なんだから、君たちもからかいすぎないようにね。
レイディア:全くだわ。
学生A :(言ってろ言ってろ。)
学生B :負けた方土下座な。「特待の」レイディアさん。
レイディア:ふん。望むところよ。
学生C :(レイディアもこの性格さえなけりゃかわいいのにな……。)
G M:レイディアは、優秀な知力(知力ボーナス+3は、人間の中ではかなりレア。
ちなみに、1つ上の+4になると、冒険者の中ですら約1300人に1人
の割合でしか存在しない。)と魔術の才能があり、数年前から学費免除の
特待生としてオーファン賢者の学院に通っていました。
レイディア:私の才能からすると当然よね。
G M:しかし、無駄に勝気な性格などが災いして周囲との良好な人間関係が築けず。
また、努力を怠ったため魔法使いとしても、賢者としても伸び悩んでいました。
レイディア:ああ、不幸なレイディア。
G M:知力が高いせいか、レイディアは口だけは達者です。
また、ほとんどの人間は生来古代語魔法を使うことができません。
そして、特待生のレイディアは、3年間特待生として過ごしている割に
たいした魔法は使えません。むしろ、なんでクビにならないか
謎だと言われています。そのせいか、生半可な口だけよりも、
憐れに思われない分、余計に反感を買います。
レイディア:かわいくて優秀なのも辛いわねー。
G M:さすがに有名人で、皆から陰で「特待の」レイディアとか、
嘘つきレイディアとか、へたれのレイディア、
略してへたレイディアとか呼ばれています。
レイディア:あんまりだわ!
G M:そして、今回のような事件となったわけです。
レイディア:(お父さん……レイディアは、またやらかしてしまいました……。)
レイディア:こうなったら……。
レイディア:……本当に取ってくるしかない!!
G M:レイディアは高い知能を持ってはいますが、根本がどこか馬鹿なのでした。
レイディア:というわけなんだけど、どうにかしなさい。
トゥエリ :いや、課題写して、と同じレベルで頼まれても困りますヨ。
レイディア:写させて、って言ったらわたしが書かないといけないでしょうが!
トゥエリ :そもそも、課題は自分でやりましょうヨ。
レイディア:ふん。抜き打ちじゃないってことは、他人の力を借りていいってことよ。
トゥエリ :自分でやることが前提だと思いますヨ。
いつも筆跡合わせるので一苦労なんデスから。
それと、今回のはいくらなんでも私の能力を超えてますヨ。
レイディア:それを何とかするのがあなたの仕事でしょうが。
トゥエリ :仕事ではありませんし、私には不可能デス。
レイディア:つべこべ言わずに、やれよ。魔法使いとしてのレベルは同じだろうが。
トゥエリ :今回ばっかりは無理デス。ほらの規模が大きすぎますヨ。
レイディア:あんたも蛮族とか言われて悔しくないの? それでも男?
トゥエリ :それは事実ですし、レイディアさんからふっかけたケンカでしょう。
レイディア:……わかったわ。じゃあ、方法だけ教えなさい。
トゥエリ :冒険者の店に行けば、売ってもらえるかもしれません……。
レイディア:わかった。行ってくる!
トゥエリ :……けど、高すぎて私たちじゃ……あ、行っちゃいましたカ……。
G M:トゥエリは、レイディアと魔術の師匠を同じくし、
彼女の弟弟子にあたります。努力の甲斐あって成績は優秀で、
使える魔法の種類はレイディアと同程度です。
ですが、人がいいせいか、姉弟子のレイディアのわがままに振り回され、
苦労が耐えません。
トゥエリ :(嘆息)レイディアさんにも困ったものデスね。
ディース :おー、ちょうどよかった。お前、ジュースおごってくれよ。
トゥエリ :ディースさん、私特待生だからお金持ってないデスって。
ディース :持ってないんなら、もしあったら俺のな。ほら、ジャンプしてみろよ。
トゥエリ :(嘆息)わかりましたヨ。←3ガメル差し出す
ディース :おお、サンキューな。いじめられたら俺の名前出していいからな。
G M:ディースは、子供の頃に聞いた魔法戦士のサーガ(伝承歌)に憧れ、
親の金で学院にねじ込んでもらったという、商人の馬鹿息子です。
言動が荒く素行が多少悪いものの、情熱も魔術の才能もあり、
早くもレイディアと同数程度の魔法を習得しています。
フアナ :(……かちゃかちゃ……)
ディース :3ガメルゲット〜♪ お、フアナ発見。
ディース :(一人で錠前みてーなのをかちゃかちゃやってるけど……。)
ディース :よう、フアナ、何やってんだ?
フアナ :……鍵開け……何秒で開けられるか、挑戦中……。
ディース :お前は盗賊か!? 相変わらず奇行が目立つな。
フアナ :……ほっといて。
ディース :素行には気をつけろよ。
フアナ :……あなたには負ける……あと、2人前にカツアゲしようとした奴……。
ディース :!? 見てたのか? 気配なかったけど……。
フアナ :……あいつ、レイディアの同期でライトニング撃てるから……。
ディース :うげ……ら、らいとにんぐ……。
フアナ :……カツアゲは……顔を見てから……やるといい……。
ディース :……わ、わかった。(な、なんで個人の魔法の種類まで知ってるんだ?)
フアナ :……じゃあね。バイビー……。
ディース :?
G M:フアナは、エルフ特有の頭の良さを見込んでスカウトされた特待生です。
退屈が嫌いでやや奇行が目立つものの、成績の良さもあって、
導師連中には黙認されています。
学生D :歩きながら何やってるんだ、あいつ。
学生E :最近入ってきた特待生だろ。もうスリープ・クラウド撃てるとか。
学生D :エルフだからってありえないだろ! 何者だよ!?
学生E :化け物じゃねーの?
学生D :この前、床にチョークで変な落書きしたらしいな。
学生E :そこまでは知ってる。さすがに怒られたとか。で、結局どうなったんだ?
学生D :「特待の」レイディアの課題やってやるかわりに、奴に消させたらしい。
学生E :あはははは。へたレイディアか、光速で抜かれてるな。
学生D :いや、でも特待にとどまってるってことは、かなり優秀ってことだぞ。
学生E :確かに、魔術で金もらってるのと同じだもんな。それすら一瞬で抜き去るか。
学生D :噂によると、レッサーデーモンのダブラブルグってのが、
オーファン侵略のため、エルフに化けて学院に乗り込んでるとか……。
学生E :なるほど。天才ぶりも奇行もそれで説明がつくな……。
フアナ :……(かちゃり)開いた。次は120秒以内が理想……さて……。
学生D :お、おい、こっち来るぞ!
学生E :うわぁぁぁぁ!
フアナ :(ぼそっと)……わたしは……ドッペルゲンガー。 ←そして、去っていく
学生D :……ドッペルゲンガーって何だっけ? 植物? 動物?
学生E :……多分デーモンだったろ。レッサーだっけ? あー、びっくりした。
学生D :それにしても、とっさにそんな名前が出るとは、天才もここまで来ると。
学生E :(後ろを指しながら)それに引き換えあっちは……。
フィーエル:あうー?
学生D :ここに来たときは共通語すら読めなかったとか。
学生E :……し……試験とか、どうやるんだ……?(絶句)
学生D :実は、親が凄い金持ちらしいぞ。実家はヒノキ風呂。お前とこよりだいぶ上。
学生E :(……ヒノキブロ?)うちよりだいぶ上!? 王侯貴族か!?
学生D :それが、伝説の商人らしい。その息子がアレだ。
学生E :子供が親と同じように成功したら苦労いらないもんな。(苦笑)
学生D :身につまされる思いだな。(苦笑)
学生E :で、あいつの適性試験の点、へたレイディアの10分の1だとさ。(笑)
学生D :……それが、最近、初級の魔法は一通り覚えたらしい。
フィーエル:あうー?
学生E :……共通語読めなかった奴がか!?
学生D :俺もあいつが上位古代語でプロテクション唱えてるのは見たことあるよ。
学生E :……じゃ、俺ら抜かれてるじゃねーか!
学生D :エルフの女と同レベルの怪奇現象だよな、ある意味。
学生E :まあ、俺らは親の後継げばいいし。テキトーにやればいいって。
学生D :それはあれも同じだろ? 長男だそうだし。
学生E :だったらなんでそんな真面目にやってんだ?
学生D :さあ? あの寮の奴が言うには、勉強時間は俺らの10倍以上らしい。
学生E :……それ、発狂しねえ?
学生D :やっぱり、するよな。
学生E :やっぱり、ある意味、化け物だよな。
フィーエル:あうー?
学生E :実はさ、長男じゃなくて長女で、政略結婚前に教養をつけさせるために、
ここに送り込まれてるって噂も。
学生D :それは初耳だ。……でも、あの顔だもんな。……そういえば、
人前では絶対に着替えないとか。女なら今のうちに声をかけとかないと。
学生E :待て、あくまで噂だ。万が一男をナンパしたなんて知られた日にゃ、
へたレイディアの代わりに俺らが笑いものになる。
学生D :それもそうだな、ここは様子見か……。
学生E :だな。
フィーエル:あうー?
G M:フィーエルは、超美形ながら、頭を使うのが苦手な学生です。
(知力4(ボーナス+0)は、冒険者候補になる人間の実に最低値です。)
しかしながら、超人的な努力の成果と、なぜか持っていた魔術の才能により、
レイディアと同程度の数の魔法を習得しました。
そんな彼は、実地で様々な経験を積むため、冒険者になりたいと考えています。
フィーエル:あう。冒険者、なりたい。
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