ひみつのチュートリアル−2





G   M:情報漏洩防止のためにデスクトップPCを破壊せよとの指令ですが、
      園児のパンチやキックでは、なかなか厳しそうな感じもします。
      なお、2050年代の常識として、いくら旧型のPCといえども、
      記憶装置がどの辺に入ってるかくらいは全員知ってます。
      さて、ハジメは策があるとのことですが……。

ハジメ  :第一に、重力を利用した作戦が考えられます。

G   M:確かに、重力はとても重要なものです。
      下手に園児の腕力で攻撃するよりは、協力して持ち上げた上で近くに放り投げて、
      自重を利用した衝撃でクラッシュさせる方がはるかに確率は高いでしょう。

ハジメ  :しかしながら、それだとディスプレイの破片が飛び散って、怪我をする可能性もあります。
      ですので、硬いケースに入った内部から破壊しましょう。

アキラ  :そんなこと、できるわけが……。

はるひ  :わかりましたわ! まずぶんかいして、中にばくだんをしかけますのね!

アキラ  :その手があったか……!

ハジメ  :……それも素晴らしいですが、女王様。
      女王様のアメを、あの中に召喚することは可能ですか?

アキラ  :!

はるひ  :やったことありませんけど、できますの?

G   M:ええと、各人の能力は各人ごとに絶対的なもので、基本的に成長はしません。
      とはいえ、可能なことの範囲は最初から決まってまして、
      できる可能性に気付いて、やってみて、できたなら可能です。
      要するに、固有の限界と自覚と、2重の制限を受けるわけですね。

はるひ  :……つまり、どういうことですの?

G   M:実は、はるひの能力は、射程自体はめちゃめちゃ長いです。
      ですが、単なる召喚能力ですので、自動追尾能力まではありません。
      最初のうちは、手元に無意識に召喚したアメを、
      常人離れした器用さで狙ってぶつけてるだけ。
      ですが、能力を自覚した上で戦いに慣れてくれば、
      指差した上空に召喚して降り注がせたりも可能です。(アメだけに。)
      まあ、元がアメなので、かなりの距離を落とさないとダメージが増えませんし、
      距離が長くなるほど精度が下がるし回避が容易になるという弱点も備えていますが。
      なお、現在は、今言ったことができるだけの自覚があります。

はるひ  :おーっほっほっほっ! しばはらふうなんて目じゃありませんわ!

ハジメ  :(な、なんという非科学的な……。いえ、ここは割り切りましょう。)
      内部を指差せば、そこに召喚できるということですか!?

G   M:前述のように、はるひの場合、召喚するアメとの直接接触は発動条件ではありません。
      とはいえ、明らかに中に何かある場合、そこには召喚できませんね。常識的に考えて。

ハジメ  :(ふむふむ。しかし、妙な部分だけ科学的ですね……。)

はるひ  :なら、高い空からアメをおとすしかないんですのね。

G   M:この部屋には天井がありますし、無理でしょうね。

はるひ  :むずかしいですわ……。

ハジメ  :粘度の低い水飴を召喚して、ショートさせるのはどうでしょう?

はるひ  :ね、ねんどは出せませんわよ。

ハジメ  :女王様、水飴をお願いします。水分を多めにするのは可能ですか?

はるひ  :……?

G   M:実は、はるひちゃんがアメだと認識してないものは、たとえアメでも召喚できないんですよね。
      したがって、本人が現実にアメと認識していない水飴は召喚できません。
      逆に、アメだと認識していれば、食べたことがなくても可能です。
      包み紙ごと召喚できるのは、そういう理由もあるわけですね。
      ここまでが、本人の認識による限界というわけです。
      対して、仮に本人がアメだけでできた家を見たことがあったとしても、
      召喚できません。大きすぎて、能力の限界を超えているからです。
      これが、本人固有の限界です。もっとも、これについては能力レベルで変わってきますので、
      同系統のレベルが違う能力者がいれば、可能な場合もありえます。
      まあ、レベル8クラスになればたとえアメ玉1個でもめちゃめちゃ強いので、
      可否以前に、無駄に巨大な物品を召喚する必要がなかったりするんですが。

はるひ  :ようするに、コップに入れたらいいんですの?

アキラ  :はるひちゃん、さっきのは気にしないで。

ハジメ  :なるほど……。左手での召喚も可能ですよね?

G   M:はい。可能です。

はるひ  :おーっほっほっほっ! わたしも右投げ左打ちですのよ!

ハジメ  :では、離れたところから、右手と左手であの機械の外側を指差して、
      そこに同時に重ねて召喚して爆発を起こすというのはどうでしょう?

G   M:結論から言うと、不可能です。
      ハジメすら知らないでしょうけど、仮にそれが可能だとすると大爆発では済みません。
      また、仮にそれを認めると、壁の中にワープでめり込むことも起こりえますし、
      2個以上の実在する物品を、離れた場所から同時に召喚できる能力が強力になりすぎます。
      まあ、はるひと同系統でも、レベル8の能力者ともなれば、
      上空で加速をつけておいたアメを虚空から高速射出したり、
      それを応用してお互いに高速でぶつけて簡易爆弾にするくらいのことはできるでしょうけど。

はるひ  :レベルスレイブのわたしだと、むずかしいですのね。

ハジメ  :女王様、スレイブは奴隷です。おそらく、ファイブのことかと思われますが……。

はるひ  :だれがどれいですってぇ!!!?

ハジメ  :ヒィッ!

アキラ  :はるひちゃん、おちついて!

ハジメ  :じょ、女王様、僕らが強ければいいのです! このままこの町全土を支配しましょう!

はるひ  :……しかたないですわね。わかりましたわ。

G   M:で、PC破壊の件ですが……。

ハジメ  :結論が出ました! ここはひとつ、彼の能力に任せましょう。

アキラ  :おまえに言われなくても!

G   M:さて、力ずくでの破壊の難易度は、今回の場合は15です。もちろん、基準は『ちから』。
      はるひやハジメの場合、2連クリティカルが前提ですので、確率は3%を下回ります。
      アキラの場合はちからが7もありますので、14%弱の確率で破壊可能。
      とはいえ、ちからが最高値の9だったとしても、約16.7%までしか上がりません。      
      能力を使わないでも可能なことに能力を使う場合は、判定が必要なら、
      使用するステータスを『ひじょうしき』で判定します。アキラの場合は4です。
      これに、状況に応じてGMが修正を加えます。目安として、−9〜+9の範囲が通常です。
      今回の場合は、電子的記録を消去するために雷をぶつけるわけですので、
      相性としては最高です。したがって、+9の修正を加え、13+サイコロでの判定になります。
      目標値が15なので、約84%の確率で成功しますね。
      仮に、同系統のレベル1の能力者ですと、成功率は67%弱まで落ちます。
      場面にぴったりの能力ですと大幅に有利ですが、そうだとしても、
      能力レベルが無関係な状況ばかりではないのです。
      あと、便利な能力とはいえ、どうしても相性があります。
      例えば、ゴムボールを破壊する場合ですと、雷系の能力は逆に大幅なマイナス修正が
      かかるでしょう。なお、能力の属性については、バトルデータも参考にしてみてください。

ハジメ  :キシシシ。雷とゴムとは、なかなかの相性ですね。 ←メガネの位置を直しながら

アキラ  :……だまれ。 ←何かの真似をしているらしい

G   M:あとは、自然法則に起因する物理現象には気をつけてください。特に重力。
      例えば、はるひの場合、射出の能力ではありませんので、
      アメを投げる場合、あまり高くまでは投げられません。

はるひ  :言われなくても、そんなの当たり前ですわ! ←えっへん

G   M:もちろん、落とすだけなら大丈夫です。その場合、むしろ重力は大歓迎ですし。
      いずれにせよ、重力は重要なものです。例えば飛行など、重力に逆らえる能力でも、
      常に能力レベルが1下がるくらいの扱いなのは覚えておいてください。
      つまり、魔法的な飛行能力ですと、最低でも6レベルということですね。

ハジメ  :物理法則を無視するのに最低5レベル、それに+1レベルということですね。

G   M:そうです。飛べているなら、下がった後のレベルが5必要ですからね。

はるひ  :……? よくわかりませんけど、おまかせしますわ。

G   M:あとは、重力ではありませんが、雷系の能力の場合は、
      全身が濡れているときや、可燃性のガスが充満してるときに使うと危険です。
      ミョルニルの柄の部分には電気は通りませんが、全体が濡れてたらそうもいきませんからね?

アキラ  :おれはだいじょうぶだ!

ハジメ  :(一体何が大丈夫なのでしょうか? そもそも、プラスチックが帯電するなど……。)

G   M:なお、たとえば腕力を増強する能力ですと、場合にもよるでしょうけど、
      ちから+ひじょうしきで平均せずに判定することも考えられます。
      普通の力比べよりは絶対的に有利という表現ですね。
      まあ、今回は関係ないので、判定のサイコロ振っちゃってください。
      1以外なら成功です。1だと、奇跡的にデータが生き残ったことになります。

アキラ  :うちくだけ、ミョルニル! (ころころ)5!

G   M:アキラが振りかぶったピコピコハンマーは、周囲に雷を帯びたまま、
      PC本体を叩きます。バチバチッという音がして、PCからは黒い煙がぷすぷすと。

ハジメ  :では、感電しないよう、僕が消しゴムでスイッチを……。

G   M:微弱とはいえ、雷をまともに食らいましたので、
      スイッチを押しても完全に沈黙してますね。指令は達成です。

ハジメ  :ふむ。僕の計算通りですね。 ←メガネの位置を直しながら

アキラ  :お、おまえ……!

はるひ  :よくできましたわ。2人には、アメをいっぱいあげますわ。

ハジメ  :ありがとうございます、女王様。

アキラ  :……あ、ありがとう。 ←照れて明後日の方向を向いている

はるひ  :おーっほっほっほっ! このちょうしで、まずはこの町全部せいあつしますわよ!

ハジメ  :キシシシ。もちろんですとも、女王様。 ←メガネの位置を直しながら

アキラ  :うん!

G   M:これで、ひみつのチュートリアルは終了です。
      もちろん、能力や場面にもよりますが、今までのチュートリアルの内容も適用されます。
      例えば、戦闘系能力者などは、簡易バトルで能力レベルを基準に、
      プラス修正を得てバトルすることもできるわけですね。
      他にも、自分の能力が有効に使えそうなときは、GMに提案してみてください。
      皆さん、能力を上手に使って生き抜いてくださいね。それでは!


バトルのチュートリアル−27 へ
次 へ

トップページへ