第3話・第0節





『ピカレスク』



主に文学用語ですが、『ピカレスク』というジャンルがあります。
早い話が、悪者が主人公の物語と考えてください。
昔の漫画だと、『デスノート』がそれにあたります。
あの漫画、当時一番売れてた少年漫画雑誌で連載されてたそうですよ?

昔の漫画に詳しくない人に『デスノート』のあらすじをざっと説明すると、
ある日突然、『名前を書かれた人間が死ぬノート』を拾った主人公の青年が、
ノートに悪人の名前を書いて殺していくお話です。
怖いですよね。

まあ、ただ悪人を殺す漫画なら、昔からありましたけどね。
『デスノート』の場合は、直接戦わなくても、
名前を書いただけで死ぬのが大きな特徴です。
安全なところから殺せるわけですね。
そして、主人公は世の中を良くするために、信念を持って悪人を殺していきます。
死を司る力を手にした彼は、自ら神になろうとしたのです。
法務執政官がいない時代の漫画なのに。いえ、だからこそなのでしょうか。
実は、血も涙もない法務執政官の中には、この漫画の影響を受けた人もいるとかいないとか。

でも、彼は法務執政官ではありません。
『デスノート』のそれは法にのっとらない殺人ですから、青年は捜査機関に追われることになります。
そこで、青年は捜査機関の人間の名前をノートに書きます。何も悪いことしてない人を殺しちゃうわけですね。
さしたる葛藤もなく、さながらゲーム感覚で。
この作品が『ピカレスク』に分類されるのは、そういうところにあるのでしょう。

では、いくらお話とはいえ、悪者を主人公にした『ピカレスク』
などという反社会的な作品が多くの支持を集めるのはなぜでしょう。
それは、黎明期の『ピカレスク』文学が貴族批判に始まったように、
社会悪、とりわけ支配体制に対する民衆の反抗心をくすぐったからなのです。

そして、現代の社会にも、悪者に憧れる人たちは絶えないようですね。
「不良はもてる」と言われるように、世の中には
そういうのがかっこよく見える人たちもいるようですし。
とはいえ、私と同じで、本物の犯罪者の実態なんて知らないんでしょうけどね。

あやめ幼稚園。
悪に憧れた彼らは、どれほどの悪事を見せてくれるのでしょうか。


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