序章・ある日のひまわり幼稚園





G   M:ひまわり幼稚園の運動場には、ゆうすけ、ふう、ケンの3人が。
      『ふとんかいじゅう』の異名を持つふうはいつも通り、掛け布団をかぶったままです。

ふう   :……さすがに、ちょっと暑い……。

ゆうすけ :脱げよ!

ケン   :おっ、さすがアニキ、エロいっすねぇ!

ゆうすけ :そういう意味じゃない!! 布団を脱げ!

ふう   :……下に……何も着てなくても……?

ゆうすけ :えっ!!!?

ふう   :……着てるけどね。

ケン   :さすがアニキとあねさん、エロいっすねぇ!

ゆうすけ :……お前ら、いい加減にしろよ。

ケン   :ひぃぃぃっ!

G   M:3人が運動場で待っていると、ずざざざざざと轟音を立てながら、
      一人乗りの赤いソリに乗って、金髪の女の子がやってきます。
      その前では、2人の年中組の男の子が立って、必死にロープでソリを引いています。
      傍らには、、三輪車をキコキコこぎながらやってきた、
      ピコピコハンマーやなわとびなどを持った男の子の姿が。
      そして、ゆうすけたちの少し前で乗り物は止まり、
      2人とも乗り物から降ります。男の子は、年齢の割に背が高いですね。

はるひ  :おーっほっほっほっ。お待たせしましたわね。

アキラ  :……。

男の子A :はるひさん、やくそくのおだちんを!

男の子B :ギブミーキャンディー!

G   M:肩で息をしながら、男の子たちははるひに飴を要求します。

はるひ  :……そんなにゼーゼー言ってたら、わたしが重いみたいじゃありませんの。

アキラ  :……。

はるひ  :働きの悪いブタには、これで十分ですわ。

G   M:そう言って、はるひはポケットから取り出したキャンディを、ばらまきました。
      色とりどりの包み紙に入ったキャンディが、地面にばらまかれます。

男の子A :おおーっ!

男の子B :ギブミーキャンディー!

G   M:男の子たちは、我先にとキャンディを拾い集めます。

はるひ  :おーっほっほっほっ。ブタはブタらしく、地面にはいつくばっていればいいんですわ!

ケン   :な、なんてひどい奴だ……! おら、どけ!

G   M:ケンは、男の子2人を押しのけて、キャンディを拾っています。

ゆうすけ :お前も拾うのかよ!! あと、お前も十分ひどいし!

ふう   :……かみやはるひ……圧倒的なカリスマで、
      あっという間にひまわり幼稚園のほぼ全員をまとめあげた女……。

はるひ  :あら、よくごぞんじのようですわね。もっとほめてもよくってよ?

ふう   :……力が弱くて性格も悪いのに、1つの園をまとめあげた凄い統率力……。

はるひ  :……あなた、ケンカ売ってますの!?

アキラ  :(小声で)……はるひちゃんは、優しい。

はるひ  :アキラくんはだまってて!

ふう   :……彼女の統率力を語るには、アメの存在が欠かせないという……。

ゆうすけ :欠かせないっていうか、100%アメの力だろ!

はるひ  :な、なんですってー!!?

アキラ  :……。

ケン   :へっ、オレ様がほとんど拾ってやったぜ! ←アメを拾い終えたらしい

男の子A :ひ、ひどい……。

男の子B :ギブミーキャンディー……。

ケン   :あぁ? こっちにゃアニキとあねさんがいるんだ。文句あんのか?

はるひ  :……そういえばあなた、なぜそちらにいるんですの? ←冷たい瞳

アキラ  :……。 ←無言でケンをにらむ

ケン   :ひぃぃぃっ!!!

はるひ  :そうだ、いいことを思いつきましたわ。

G   M:はるひは、自分の足元に大玉のキャンディを3個落とします。
      とてもキレイな色の、キラキラ光る包み紙です。

はるひ  :パパに買ってもらった、輸入物のトロピカルキャンディですわ。
      わたしにひざまずくなら、あげてもよくってよ?

ケン   :……。 ←ゴクリとつばを飲み込む

ふう   :……ケンちゃん、ダメだよ。

アキラ  :……。 ←無言でケンをにらむ

ケン   :……あねさん、ごめんなさいっす!

G   M:ケンは、はるひの足元のアメに飛びつきます。

ゆうすけ :お、お前……あっさり裏切りやがったな……。

ふう   :……しかも、ゆうちゃんにはごめんなさいしてないよね……。

ケン   :アニキもごめんなさいっすー! ←と言いつつ、アメを拾う

はるひ  :おーっほっほっほっ。ちょろいもんですわね。
      2人だけで、わたしたちに勝てると思って?

アキラ  :……。 ←余裕の表情

はるひ  :今のうちにこうさんしなさいな。今なら、ドレイにしてあげてもよくってよ?
      おーっほっほっほっほっ。

ケン   :ついでにあと2つもいただきぃ!

はるひ  :いじきたないですわね……。まあいいですわ。
      そこの2人、心配しなくても、キャンディならまだありますわよ?
 
ふう   :……ケンちゃん、はるちゃんにアメの入手先吐かせたら、食べ放題だよ。

ケン   :!

はるひ  :なっ!?

ふう   :……しかも、はるちゃんにやりたい放題だよ。

ケン   :!!

アキラ  :!!!?

ゆうすけ :お前、地味にえぐいな。

はるひ  :なっ、なんてやつですの……!?

ケン   :へっへっ、裏切ったフリして様子を見てたんだが、バレちゃあしょうがねぇな。

ゆうすけ :とりあえず、お前が信用できないのはよくわかった。

ケン   :アニキー、そんなつれないこと言わないでくださいよぅ。

G   M:ケンが弁解のために振り向いた隙を突いて、2人が動きます。

はるひ  :キャンディ・レイン!

G   M:はるひは、一握りのキャンディを両手で空高く放り投げます。

アキラ  :ほえろ、ミョルニル!

G   M:素早く動いたアキラのピコピコハンマーが、ケンの両肘を捉えます。
      そして、アキラはすぐさま離脱。

ケン   :ほげぇ!! で、電気が……。

ゆうすけ :ひじを打ったらビリビリするアレか!

ふう   :……ケンちゃん、上!!

ケン   :え? ←上を向く

G   M:そこに、はるひが先程放り投げた飴玉が落下してきます。

ケン   :おばばばばば!!! 痛い!! これ地味に痛いっ!!

はるひ  :おーっほっほっほっ。『アメ』のお味はどうですの?

アキラ  :ほくおうせんたい、オーディンジャー!! ← かっこつけてポーズをとる

ゆうすけ :戦隊モノだったのかよ!

はるひ  :わたしは違いますわよ!

アキラ  :……はるひちゃんは、フレイヤレンジャー……。

はるひ  :あんなのといっしょにしないでくださる!?

アキラ  :(小声で)……だって、かわいいから……。

はるひ  :おーっほっほっほっ、もっと大声で言ってもよくってよ!

アキラ  :…………。 ← 照れているらしい

ゆうすけ :ていうか、どんな戦隊だよ……。

ケン   :アニキ、聞いたことありやすぜ。
      史上初、仲間のロキレンジャーがマジで裏切って悪モンになった凄い戦隊っす!
      最後に正義の戦隊の1人と戦って、両方死ぬんす!

ゆうすけ :んなもん子供に見せるな!

アキラ  :……。

ケン   :しかも、レンジャーのほとんどが敵の幹部と相打ちになって死んじゃうんす!

ゆうすけ :ますます子供に見せるな!

アキラ  :…………。

はるひ  :……もう止められませんわね。あなたたち、タンバリンを持ってきなさいな。

男の子たち:はいっ!

アキラ  :…………おまえら、今、オーディンジャーをバカにしたな?

ケン   :ひぃぃぃぃぃっ! ほんとはオーディンジャーが乗ってるフェンリルが大好きっす!!

アキラ  :……そいつはてきだ。オーディンジャーのメカはスレイプニル……。 ←静かに怒る

ケン   :違う違うよ違いますっ! ほら、ヨルムンガンド最高っす!!

アキラ  :……ほう……おれのしゅくてき、ヨルムンガンドが好きか……。 ←静かに怒る

ケン   :ひいぃぃぃぃぃいぃっ!! ア、アニキ、こんな奴やっちゃって下さいよぅ!

G   M:ケンは、ゆうすけの後ろに隠れます。

ケン   :やーい! バーカバーカ! アホバカマヌケー! おしーりぺーんぺーん!

ゆうすけ :お前……。

G   M:そこに、先程の男の子たちが、2台目の三輪車を持ってきます。

男の子A :はるひさん、タンバリンもってきたっす!

男の子B :これで2つのタンバリンがそろったっす!

はるひ  :タンバリンとタンブリンじゃありませんこと?

G   M:どう見ても楽器のタンバリンではなく、三輪車です。

ゆうすけ :……タンバリン?

ケン   :多分、あの2台の三輪車は、トールレンジャーが乗ってるヤギ型のメカっすね。
      たしかに2台ともタンバリンみたいな名前だったっす。
      あいつ、雷神のトールレンジャーになりきってるつもりっすよ。まさに電波っす!

アキラ  :……。 ←ギロリとにらむ

ケン   :ひぃぃぃぃぃぃいいいいいいっ!!!

ゆうすけ :いちいち煽るな!! しかも、そんなにうまくないし!

はるひ  :アキラくん、タンバリンとタンブリンでしたわよね?

アキラ  :…………名前は、そんなに重要じゃない……。

はるひ  :あら、そうですの?

ケン   :! アニキ、あいつ、自分のメカの名前覚えてないんじゃないっすか!?

アキラ  :……!!?

ゆうすけ :どうせお前も覚えてないだろ。ほっといてやれ。

はるひ  :アキラくんをあなたたちといっしょにしないでくださる!? 

アキラ  :えっ!?

ふう   :……なら……言えるよね……。

ケン   :ほら、言ってみろよ。

アキラ  :…………タング(ごにょごにょ)と、タング(ゴホンゴホン)だ……。

ゆうすけ :ごまかしたー!!?

ケン   :うおぉぉぉっ! あのアキラに思いっきりツッコミ入れたー!
      アニキかっけー!!

ふう   :……ゆうちゃんは……ツッコミぐせがあるから……。

アキラ  :……おまえら、もうゆるさん……すりつぶす……。

ゆうすけ :ピコピコハンマーでか?

ケン   :ぷっ。

アキラ  :……ミョルニルだ!!

はるひ  :仕方ないですわね、とっとと始めますわよ。

ふう   :……2対2でいいから……勝った方が、カードと支配権ゲット……。

はるひ  :のぞむところですわ!! アキラくん、いきますわよ!!!

アキラ  :おう!!! ←戦隊風に

G   M:かくして、ひまわり幼稚園の支配権を賭けた戦いが、幕を開けます。


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