第60話・



ぬしさまは、思いのほか弱かった!
最大の弱点は、その驚くべき遅さだ。
こちらはその気になればHPを全快できるアイテムを持っているので、
痛恨無しの単体攻撃、しかも、1回行動では話にならない。
本領を発揮して津波を放ってきた頃には、すでにあちらのHPが尽きかけていたのだ。

倒れたぬしさまの口から、オリガが出てきた。



オリガ
「あたし……なんともない……。
 旅人さん! おケガはありませんか?」



そのとき、ぬしさまが再び起き上がり、口を開く!



オリガ
「キャ……!!
 やめて! ぬしさま!! この人には手を出さないで!」



手、ないけどな。



ぬしさま
「オリガ……その者は、村長の手下ではないのか……?」
オリガ
「……! その声は……?」



ぬしさまの中から魂が出てきて、男の幽霊の姿になる。



オリガ
「おとう…さん……? お父さん!!!」
村長
「な……なな……!?」
サンディ
「なに? ちょっと、どーゆーコト?」
オリガの父
「旅人よ。申し訳ないことをした。怒りで私はどうかしていたようだ……。
 オリガ……つらい思いをさせて、すまなかった。
 あの嵐の晩……海に投げ出された私のもとへ、黄金の果実が降ってきたのだ……。
 薄れゆく意識の中、それを手に、私は浜に残したお前を想った。
 まだ小さいお前が、これからどう生きていくのかと……。
 そしてあの時、私は確かに死んだ。だが、次に目が覚めたとき……
 私はこうして、この姿でよみがえっていたのだよ。」
オリガ
「そんな……そんな……。」
オリガの父
「私は、お前が生きていくために、浜に魚を届けていたのだ。
 だが、いつしか、お前の元に人々が群がるようになっていった……。
 だまって見ていたが、もうここまでだ。
 行こう、オリガ。こんな村は捨てて、遠くへ行こう。
 これからもずっと、私がお前の面倒を見てやる。何も心配はいらない。」
オリガ
「お父さん……。だめだよ、そんな。そんなのは、よくない。
 あたし……浜で漁を手伝うよ。
 自分でちゃんと働くの。お父さんの仕事、ずっと見てきたもの。全部覚えてるもの。
 あたしはお父さんの娘。村一番の猟師の娘。
 あたしは……ひとりでやってけるようにならなくちゃ。」
オリガの父
「オ、オリガ……。」



そこに、トトがやってきた。



トト
「オリガのパパ……なんだよね?
 ぼく、約束する! 大きくなって、オリガのことは、ぼくが守る!」
オリガ
「……トト。」



マセガキめ……。



オリガ
「お父さん。ぬしさまになって、これまで助けてくれてたんだね。
 ありがとう。でも、もう大丈夫だよ。」
オリガの父
「オリガ……」
 いつまでも子供と思っていたが、お前は私の思うより、ずっと大人になっていたのだな……。
 私のしていたことは、すべて余計なことだったようだ……。
 オリガ……。私はお前の言葉を信じよう。
 自分の力で生きるお前を見守り続けよう。」



オリガの父の幽霊は、オリガに最後の言葉を残し、消えていった。
そして、気がつくとそこには女神の果実が。
みつばは女神の果実を手に入れた

こうして、果実を取り戻したみつばは、
オリガたちと共に、ツォの浜へと戻った。
そして、夜があけた……。

オリガの力がなくなったことは村人たちに伝えられ、村長はショックで寝込んでいる。
オリガは船に乗せてもらえることになったが、
今はとりあえず、網の片付けを手伝っているという。



オリガ
「あたし、がんばりますよ!
 お父さんもお母さんも見守ってくれる。
 それに、トトだっていてくれるもの!」



……クソガキ、てめぇ……。

ともあれ、ツォの浜は、少しずつ元の暮らしを取り戻していくことだろう。
漁が再開されて船も出ることになったし、一件落着だ。
ツォの浜では、今日も、小鳥のさえずりが聞こえる。




「ピピッ、チュン!」


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