第07話・胸のかたち、人のかたち



思えば、ここまではかなり運がよかった。
そのしわ寄せがここで来たか……。

今後のため、敗因を整理しよう。

まず、敵が2匹いたのがいけなかった。
一人旅だと、敵の攻撃が1人に集中してしまうため、ザコの攻撃でもそのうち当たる。
そして、ザコの攻撃でも当たればバカにできないのは、前述の通り。
したがって、たとえザコでも放置できなくなる。
なお、ボスは回避能力がザコより高い場合が多く、ほぼ必ずザコよりHPが高い。
とすると、先にザコから倒す方がまだ効率がいい。
さらに、放置できないザコを相手にしている間に、ボスも攻撃してくる。
……といった具合だ。

次に、運が悪すぎた。
序盤の敵の攻撃をほぼ無力化できるブラント・ウェポンだが、
ことごとく抵抗されてしまった。
そして、開始早々にコボルドのラッキーパンチを受け、
しかもダメージがやたら大きく、回復を余儀なくされた。
ポーションが無駄に減ったばかりか、1ターンのロス。
しかも、ポーションの回復量がことごとく振るわず、
切り札の運命変転を早々と使い切ってしまった。

そして、決定的な敗因。
武器を命中しにくいスピア系に変えたのが誤算だった。
少なくとも、防護点の低いグレムリンに関しては、
命中しやすいソード系の方が、まだ向いていたのだ。

もちろん、スピア系の命中率が下がるのは計算のうちだった。
最初に戦ったグレムリンのデータを見て、
これがまた出てきても、スピアなら大丈夫と判断していた。
しかし、そこにはいくつかの誤算があった。

第一に、飛行能力。
『ソード・ワールド』のルールにある程度慣れてくると、
モンスターのデータの数値を見れば、
「これなら勝てる」「これは無理」など、一瞬で大体の判断ができる。
初代ソード・ワールドの場合は、飛行能力による回避点の上昇が、
予めデータの数値に含まれていた。したがって、飛行能力による回避点の上昇を
うっかり見逃して、後で戦闘中に気付くといったこともなかった。

第二に、『2.0』特有のルール。
キャラクターの命中力とモンスターの回避力が等しい場合、
『初代』だと、キャラクターが勝利していた。
しかし、『2.0』の場合、受動側優先の原則により、
キャラクターだろうとモンスターだろうと回避側が勝利するという、
より明快なルールが採用された。
とはいえ、『初代』ルール20年の歴史は長すぎた。
敵の強さを一瞬で判断しようとすると、うっかり、
頭の中で『初代』のノリで計算してしまうのだ。



もちろん、いずれについても自分が悪いのだが。



今回、グレムリンに命中させるには、出目10が必要だった。
その確率、わずか6分の1。
そう。6回に1回しか当たらないのである。
対して、自分の計算では、出目8で当たると判断していた。
その確率、36分の15。
2回に1回弱当たる計算である。
確率が3倍も違ったら、そりゃ勝てんわ、という話だ。

しかも、今回は敵を選ぶことができた。
考えた挙句、強い方を選んでしまったのだから、悔しい。



そして、誤算はもう1つあるのだが、それはまた後ほど。






さて、話を進めなければいけない。
死んでしまったレイディアの処遇だ。



『ミストキャッスル』では、人は簡単に死ぬ。
しかし、それをカバーするルールがある。
『全滅表』(104ページ参照)という表に従って、全滅後も続きを楽しめるのだ。
もちろん、『穢れ』を獲得するなど、ペナルティは大きいが……。



全滅イベント(ころころ)2→ムギドによる魔改造。
ちくしょう……あそこでクリティカルさえしなきゃ、死んでなかったのに……。
グレムリンに倒され、誰かに死体を回収されたレイディアは、
ムギドというタビット(注:ピー●ーラビットウサギ人間、
ちなみに、ファンシーな外見に反して頭はいい。)
のレッサーヴァンパイアにより、体に 魔改造 を施されることになる。






ちなみに、魔改造といっても、決して
エロいパーツを付けられることではない。







一応、元からついてないこともないし。






まず、通常のルール通り、死亡によって穢れがたまる。
(ころころ)穢れは+1にとどまった。

さて、ここからが本番だ。
魔改造は、勝手にモンスターのパーツをつけられる。
そして、どこがどう改造されるかは、例によってランダム。
片腕が銃になるくらいならまだマシな方で、
場合によっては、首の横からキマイラの頭が生えてきたり、
腰から下が馬になってしまうという恐ろしいものだ。

まず、改造される部位を決める。

(ころころ)5→胸! 無い胸が!

改造の内容は……。

(ころころ)1→ディーラの羽!

背中に羽が生え、空が飛べるようになった。
絵的に美しくなった気がする。



気がつくと、レイディアは袋小路長屋の自分の部屋で、でミランダに介抱されていた。
背中に違和感を感じて触ってみると、そこには羽があった。



レイディア
「……。」



どうやら、羽は背中から生えてきているようだ。
しかも、自分の意思で動く様子。
部屋にあった鏡で、色々と確認してみる。



レイディア
(……まあ、よしとするか。男受けしそうだし。)



さて、誰が取ったのか荷物は全て無くなっていたが、
レイディアの霧の街を脱出する旅はここからリスタートする。



レイディアはようやくのぼりはじめたばかりだ
このはてしなく遠い男坂(?)を……




未完


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