きみのかたちがうつらない








前回の冒険で得た経験点は、15×500=7500点……といきたいところですが、
ヴェーナーの介入を招いてしまったため、使命完全達成とはいえません。
しかし、助力を得つつもミゴリの使いを倒したので、
使命半分達成として、3750点となります。
それにミゴリの使いの経験点をプラスして、全員が3775点の経験点を得ます。
なお、前回の1ゾロで得た経験点は、フアナ10点、トゥエリ20点、カトレア20点、
ディース40点でした。







G   M:それでは、成長申告をどうぞ。

レイディア:ソーサラー9レベルよ。

トゥエリ :ついに宮廷魔術師に並びましたネ。

フアナ  :……ソーサラー……8レベル……。

トゥエリ :シーフを上げるかと思ったんデスが。

フアナ  :……ライトニング・バインド……強い……。

トゥエリ :レイディアさんも使えますヨ。

レイディア:私、遅いからね。あと、自分で使いたいんじゃない?

トゥエリ :私は、生命力を8点上げましたヨ。

レイディア:あんた馬鹿じゃないの?

ディース :くししし。よっぽど置いてかれたくねーんだな。

カトレア :僕は、生命力と精神力を3点ずつ上げました。

トゥエリ :生命力が低かったデスからね。

ディース :お前が言うなよ。

レイディア:ふん。ディースの言う通りね。

ディース :俺は精神力5点上げたぜ。あと、セージ5レベルな。

トゥエリ :抵抗力が上がって、知識判定にも成功しやすくなりますネ。

レイディア:自分のことだけじゃなくて全体を考えるなんて、さすがね。

トゥエリ :……。

ディース :さらに、ガネードの信仰に目覚めたぜ。1レベルから役に立つぞ。

レイディア:もう、さすがとしか言いようがないわ!

フアナ  :……凄い……。

ディース :へっ。もっとほめてくれ。

レイディア:帰ったらいーっぱいほめさせてねっ!

ディース :おう!

フィーエル:あうー。

トゥエリ :……。

フィーエル:ぼくは、生命力、6点、上げる。

トゥエリ :低い敏捷度を、生命力を高くして補うわけデスか。

レイディア:人のあら捜ししてんじゃないわよ。あんたよりか全然強いし。

フィーエル:あうー。ぼく、気にしてないから。

レイディア:フィーエルって、いい奴よね。

トゥエリ :……。






G   M:さて、トゥエリは復活してから時間が経っていないので、動けません。
      そして、元の世界に帰るまで、最低24時間は必要。
      レイディアたちは、最初と最後の6時間を休憩に使い、
      12時間で中の探索を終える計画を立てます。
      最初の6時間が経過し、精神力は全快。レイディアたちは出発します。
      なお、ディースのトランスファーを受けたカトレアにより、
      全員の生命力も全快しています。

トゥエリ :24時間経っても戻って来なければ、追っていきますからネ。

レイディア:ふん。足手まといにならなきゃいいけどね。

ヴェーナー:法則により、細かい情報を与えるわけにはいけません。
      どうか、気をつけてください。

ディース :おう。行ってくるぜ!

G   M:最初のゲートに入ると、3つのゲートが並んだ空間に出ます。
      そのうち1つから出てきたようですが、全て光を失っていますね。
      出てきたゲートの前に出現するので、どこから出たかはわかります。
      残りは2つ。そのうち1つのゲートは、ファーランドへと通じていた筈です。
      残る1つは、入り口にアイアンゴーレムがいた遺跡の筈です。
      どちらかに入りますか?

レイディア:アイアンゴーレムの方に入るわ。

ディース :ま、そっちしかねーわな。

G   M:((ころころ)40分前……と。)
      ゲートが働かず、入れません。どうしますか?

フアナ  :罠発見……(ころころ)19……。

G   M:罠は見つかりません。入る方法もわかりません。

カトレア :いやー、参ったなー。

レイディア:戻っても、教えてもらえないわよね。

フアナ  :……普通に入れるみたいな、口ぶりだった……。

ディース :いっそ壊してみるか?

フィーエル:あ、あうー。

レイディア:じゃ、待ちましょ。

G   M:では、(ころころ)2時間後。
      ハードレザーを着て、何かを小脇に抱えた傷だらけの男が、
      アイアンゴーレムの遺跡のゲートから飛び出してきます。
      シーフ技能の記憶術で(ころころ)21のフアナはわかります。
      男が抱えているのは、少女の首です。
      額の水晶に目がいってしまうので顔の印象は薄かったのですが、
      先ほどヒュドラにくっついてた一番端の首と同じ顔ですね。
      同時に、先ほどの首がマリアンヌ・ローラ・ハルシュタットとか
      名乗っていたのを思い出します。

フィーエル:あうー。かわいそう……。

フアナ  :……あの首、さっきの……。

カトレア :事情次第では、見逃せませんね。

ディース :あれって、植木鉢で育てたりとかすんの?

レイディア:……とりあえず、生きたまま捕まえるわよ……。

G   M:さて、少女の首を抱えた男との戦闘ですが、不意打ち判定を。
      両者予期しなかったことなので、双方ペナルティーはありません。
      (ころころ)カトレアの18が最高。(ころころ)敵は11。
      知能が人間並みなので、7差では不意打ちはありません。
      1ラウンド目の行動宣言。男はレイディアに対して組み合いを試みます。

レイディア:情報源だから、殺しちゃ駄目よ。

フィーエル:レイディアさん、守って、攻撃。

ディース :俺は素手で殴るぜ。んで、手加減だ。

フアナ  :……メイスで、攻撃……手加減……。

カトレア :んー。することがないですねー。精神力は取っておきましょう。

レイディア:回避専念でもしとくわ。

G   M:では、1ラウンド目の処理に入ります。敵は組み合いなので最後です。

フアナ  :(ころころ)17……(ころころ)13点……。

G   M:3点通りました。

ディース :(ころころ)19。(ころころ)ダメージ13。

G   M:3点通りました。

フィーエル:あう! (ころころ)19。(ころころ)19点。

G   M:9点通って、生命力がちょうどゼロ。倒れて意識を失います。
      データがモンスター表記なので、この点数だと、100%生きてはいますね。

フィーエル:やった!

レイディア:馬鹿、手加減しなさいよ。

フィーエル:あうー。ごめんなさい。

レイディア:わかればいいのよ。今度からしっかりね。

フィーエル:あう!

G   M:さて、倒れた男の手から少女の首が転がり落ちます。

レイディア:……普通に見るけど。

カトレア :我が神と関係あるんでしょうか?

G   M:よく見ると、やはりヒュドラの首と同一人物なのは明らかです。
      一見、どこから見ても人間の首ですね。
      保存状態は良好で、死後数時間以内と思われます。
      ただ、ええと、カトレアは生体を解体したことがあるのでわかります。
      これが死後数時間以内だとしたら、ちょっとおかしい部分があります。
      端的に言えば、血液の流出が早すぎるんですね。まるで、
      血液の代わりに、別のサラサラの液体が入っていたかのような感じです。
      プリザーベイションの魔法でも、こうはなりません。

カトレア :これ、妙じゃないですか?

レイディア:何が妙なわけ?

カトレア :血が抜けるのが早すぎますよ。何か、別の液体が入っていたような……。

G   M:そこまで言われれば、かつてミノタウロスの首を調べた面子は、
      これがある種の魔法生物ではないかという疑いを抱けます。
      ミノタウロスで可能なことなら、難度は高くなるでしょうが、
      人間でも不可能ではないかもしれません。

フアナ  :……ゴーレム……?

ディース :くししし。んなわけねえって。

フィーエル:あう。調べる。

G   M:調べてみると、首の骨の中に何かが人工的に埋め込まれていますね。
      この首がゴーレムかどうかは断定できませんが、
      その何かは明らかに自然の物ではありません。

フアナ  :……この暴漢に……尋問……拷問……?

レイディア:時間がないから尋問でいくわ。

カトレア :んー。僕の剣使いますか?

レイディア:時間ないから遠慮しとくわ。

カトレア :わかりましたー。

レイディア:ギアス! (ころころ)6ゾロで26。

G   M:禁止命令は?

レイディア:問いに対し、真実を隠すことを禁じる。

G   M:ギアスがかかりました。

フアナ  :……縛る……。

カトレア :キュアー・ウーンズ。(ころころ)16点回復です。

G   M:それで全快しました。男は意識を取り戻します。

レイディア:正直に答えないと痛いわよ。

男    :すまねえ。さっきは気が動転してて……?
      ……本当は、追手かと思って攻撃したん……ぐああっ!???

レイディア:あんたに魔法かけて、真実を隠すことを禁止したから。

男    :……ギアスか……ち、ちくしょう……!

レイディア:この首と移送の扉とあんたの関係を、包み隠さず説明しなさい。






こうなってしまえば、捕虜となった男はどうしようもありません。
男の口から、以下の事実が語られます。

男は遺跡荒らし。首は太守ハルシュタットの娘、マリアンヌ、
の死体を材料にハルシュタットが作ったフレッシュ・ゴーレムのもの。

カストゥールの崩壊時、研究に没頭していたハルシュタットは逃げ遅れ、
娘のいた遺跡への鍵である鏡を持ったまま殺害されました。

当初はその鏡が鍵であるとは気づかれませんでした
(現に、この遺跡に直通する鍵も散逸しています。)が、
近年になって研究が進むにつれ、ハルシュタットが魔力を付与した物品の中に、
鍵としての効力を併せ持つ物があるのではないかと疑われるようになりました。

それを受けて、この男たちは仲間と共に、第三者に保管されていたこの鏡を盗み出します。
その後、鏡を追ってきた追手を殺しつつ、太守の娘のいた遺跡へ。
予め入手していた設計図から、宝物庫であるこの遺跡への鍵が
ゴーレムの頭部に埋め込まれているという情報を得、
娘が生前好きだったという猫を利用してゴーレムを退治。
頭部を切断して、この遺跡に持ち込みました。

設計図の通り、この頭部が通行証の役割を果たし、ゲートは難なく通過。
娘の遺跡でゲートの行き先の情報も得ていたため、
ファーランドと(こちらからは)行き止まりのゲートには行かず、
仲間と共にこの遺跡へとやってきます。
頭部を持っていたため、アイアンゴーレムは難なく通過
(第2話のスケルトン・ウォリアーに鏡を見せるのと同じ仕組みです)。

その後、遺跡の最深部で別のフレッシュ・ゴーレムと遭遇。
例の首をかざすも全く効果がなく、あっという間にパーティーは半壊し、
命からがら逃げてきたそうです。

なお、この男のパーティー構成は、戦士、戦士、魔法使い、暗黒神官、盗賊(本人)の
5人。首を持たないでも帰りのゲートをくぐれるのは実験済みで、
なのに誰もゲートをくぐってこない以上、残りは全滅しているだろうということです。






G   M:なお、元の世界でのハルシュタットは、蛮族による暴動すら
      予期していたのではないかと一部の歴史書に記されています。
      魔力の塔の崩壊後、遺産をどこかに隠し、
      領内から全てのゴーレムを終結させて
      (実際には、隠匿していたゴーレムもいましたが)蛮族と戦った末、
      蛮族の勇者に討ち果たされたとのことでした。
      この世界は、それとは異なった歴史を歩んだようです。

ディース :歴史は繰り返す、とは限らねーわけか。

カトレア :ははは。

G   M:この男が首を持っていたことに関しては、皆さんは特に何も感じません。
      材料が何だろうと、ゴーレムの首ですから。
      むしろ、死体とはいえ人間をゴーレムにした者の方が悪いでしょう。

レイディア:娘の死体のゴーレム、か……。

フアナ  :……えんがちょ……。

ディース :でも、ありそうな話じゃね?

カトレア :ははは。あったら怖い話じゃないですかー?

G   M:この男の罪状については、皆さんを盗品を追ってきた者と誤解して
      攻撃を加えたことが一番重いと感じます。一種の事後強盗殺人未遂ですね。

カトレア :なら殺します。

フアナ  :……止めない……。

G   M:カトレアの剣に心臓を貫かれ、男は息絶えます。

レイディア:ちょっと、まだ尋問終わってないでしょ!

カトレア :こういうのは、嘘がつけなくなったところで、追いはぎにしかなれませんよ。

フアナ  :……正論……。

ディース :さっきの話からすると、首持ってりゃボス以外フリーパスなんだろ?

レイディア:そりゃそうみたいだけど……。

ディース :だったら、これあったら通れるじゃん。

G   M:単なるゴーレムの首ですから、最初は不気味かもしれませんが、
      すぐ慣れます。むしろ必須アイテムなわけですから、
      持っていかないのも変です。

レイディア:……せ、せめて袋に入れて持って行きたいんだけど。

G   M:袋に入れた首をかざして、ゲートをくぐりますか?

レイディア:うん。

フアナ  :……先頭のわたしが、持つから……。

G   M:くぐろうとすると、立体映像が浮かびます。
      汚れた白衣を着た、細身の古代王国人の幻覚ですね。

???  :やあ、マリアンヌ。また来てくれたのかい?
      優しい子だね。愛してるよ。
      あれからずっと、彼女は君だけを待っていた。
      もう一度会ってみてくれないかい?

G   M:おそらく、これが設計者のハルシュタットの姿でしょう。
      ゲートの前に立つと首のセンサーに反応して幻覚が投影されるようです。
      台詞の内容から察するに、一定条件で台詞が変わるようですね。

フアナ  :……首ちょんぱ……ばれたら、大変……。

レイディア:そうね。行くわよ。

G   M:ゲートは普通に作動しました。
      目の前にアイアンゴーレムがいますが、襲ってくる気配はありません。

レイディア:警戒しながら進むわよ。

ディース :シュアー・ハンズかけとくぜ。(ころころ)成功。

G   M:かかりました。
      さて、結局、次の部屋に行ってもアイアン・ゴーレムは襲ってきません。
      第2の部屋は、何もない部屋です。
      部屋の入り口と出口の位置をみるに、この遺跡のこの階層は、
      正方形の敷地を区切られた3つないし4つの部屋が、
      一本道で繋がっているのではないかと推測できます。

ディース :そういや、正方形型の屋敷だか遺跡だか、行ったことあるよな。

G   M:カトレア以外は、よくわかりません。あるようなないような……。
      カトレアは、そもそも記憶にありません。

レイディア:うーん。あるようなないような……。

フィーエル:あうー。

カトレア :初耳ですねー。

フアナ  :……何しに行った?

ディース :わりい。気のせいかもしんねー。

G   M:そういえば、騎士を引退した老人と一緒に行った遺跡がそうでした。
      なぜかその騎士と戦ったような記憶がありますが、よくわかりません。

フアナ  :……?

レイディア:警戒しながら、先に進むわよ。

G   M:3つ目の部屋、人が4人ほど倒れています。
      男が言っていた仲間と思われます。

レイディア:男は周囲を警戒。私とフアナは倒れた人間を調べるわよ。

G   M:4人とも死んでいます。死因は撲殺。

フアナ  :……漁る(ころころ)17……。

G   M:(ころころ)20点の魔晶石が2個見つかります。

フアナ  :……山分け……。

レイディア:じゃ、1個はありがたく頂いとくわ。

G   M:さて、残るは最後の部屋だけですが。

レイディア:入るわ。前衛はディースとフィーエル、
      フアナとカトレアが中衛、私が後衛よ。

G   M:最後の部屋には、武装した少女の姿があります。右腕と左腕に腕輪。
      左手には指輪と剣。豪華な服と、胸元にはブローチ。
      顔は、マリアンヌほどではないですが、なかなかにかわいいですね。
      そして、額には黒水晶が。
      少女は、部屋に備え付けられた遠見の水晶球で、
      遺跡の中の様子は全て見ていたようです。

フアナ  :……インフラビジョン……。

G   M:(ころころ)6ゾロなのでわかります。
      一見ごく普通の人間と同じ温度分布ですが、
      ごく1点だけ温度の高い部分があり、
      そこから体内の液体を通じて熱が伝わっているようです。
      先ほど、極めて精巧なゴーレムの首を見ているので判断がつきます。
      体内温度まで人間に偽装したゴーレムですね。
      予備知識の無い普通の精霊使いでは、人間と見分けがつかないでしょう。

フアナ  :……ゴーレム……。

G   M:先ほどの首があるので、ゴーレムであることさえわかれば、
      この少女もフレッシュ・ゴーレムであるとわかります。
      さて、少女が口を開きます。

37号  :私は37号。マリアンヌ様のお友達として作られた……。
      マリアンヌ様がお亡くなりになれば、ここから出ることは叶わん。
      ……かくなるうえは、せめて、汝らを道連れにする……。

G   M:かくして、戦闘に突入します。





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