終の空








G   M:一方、フアナのテレポートの儀式は問題なく完成しました。

フアナ  :……テレポート(ころころ)成功……。

G   M:移動用の魔法陣を残し、フアナはレイディアたちと戦った場所に戻ります。

フアナ  :……急いでトランスファーして……13点……。

カトレア :(ころころ)成功です。

レイディア:ミゴリの目的がわかったわ。

フアナ  :……後で聞く。(ころころ)×3……前衛3人飛ばす……。

G   M:トゥエリ、ディース、フィーエルが飛びました。

カトレア :トランスファー(ころころ)成功です。

フアナ  :……(ころころ)×2……レイディアと猫飛ばす……。

G   M:レイディア、エートが飛びました。

フアナ  :……10点トランスファーして。

カトレア :残り19点しかないんですが。

フアナ  :……留守番したくなかったら……。

カトレア :……トランスファー(ころころ)成功です。

フアナ  :……カトレアを(ころころ)成功……自分を(ころころ)成功。

G   M:では、全員がフアナの描いた魔法陣の地点までワープしました。

レイディア:マリアがいないんだけど、どういうこと?

フアナ  :……車輪騎士団と交渉するために、自分から人質になった……。

ディース :騎士団と会ったのか!?

レイディア:ちょっと、それどういうことよ!!!?

フアナ  :……エルフと子供じゃ……話通じなくて……。

レイディア:まあ、あんたの判断なら仕方ないわ。

カトレア :空が……。

トゥエリ :さっきから暗くなったり明るくなったりなんデスけど、これって……。

フィーエル:あうー。こわいー。

カトレア :……この空は、間違いなく神の降臨ですね。

レイディア:普通に考えて、敵のダークエルフね。

フアナ  :……車輪騎士団の有能な将軍が……一方的に攻めてた……。

レイディア:追い詰められて信仰が深まった、か。

カトレア :ありえない話ではないですね。

フアナ  :……ダークエルフは、篭城……。

レイディア:騎士団の位置は?

フアナ  :……知ってる……多分、本陣から動いてない……。

レイディア:ダークエルフと騎士団の兵力は?

フアナ  :……騎士団は総数30以上、騎士が20全部健在、ダークエルフは不明。

レイディア:……車輪騎士団が20か……残り精神力いくつ? 私は14。

フアナ  :……6……マリアも、相当消耗してる……。

カトレア :僕は8しかないですねー。

ディース :19。で、どっち行くの?

レイディア:マリア無しでコール・ゴッドの使い手を押さえるのは難しいわ。

ディース :じゃ、マリアだな。

レイディア:でも、その規模の騎士団だったら、センス・ライ使える魔術師がいるかもね。

フアナ  :……交渉決裂したら……縛られてるマリアが……。

レイディア:クズ魔晶石でスリープ・クラウド連発したら勝てるわ。

フアナ  :……でも、そんなことしたら……。

レイディア:そうならないように交渉でまとめるし、最悪全員殺す覚悟はできてる。

ディース :本当に最悪だな。

トゥエリ :では、マリアを助けにいきましょうかネ。

フィーエル:あう!






魔法使い組の残り精神点は、レイディアが14(全快)、フアナが6、
カトレアが8、マリアが6と、レイディア以外はボロボロ。
こうなると、生命力25のマリアが主戦力として構想に入ってきます。
また、シースルー+テレポートで誰か1人ボスの居場所に送って暗殺、
という選択肢もあったのですが、砦の中で何が起こっているかを知らない以上、
リスクが高すぎてその作戦は取れません。






G   M:その頃、車輪騎士団本陣。

ロベール :もう一度聞こう。アレを設置してこいと言ったのに、どうして戻ってきた!?

騎士D−1:この娘が、邪神が降臨すると言うものですから……。

ベス   :この者は邪悪です! 即刻断罪しなければなりません!

マリアンヌ:邪悪なのはぬしではないのか、裏金女よ?

ベス   :こ、こっ、こいつっ……叩き斬ってやる!!

ロベール :待て、相手は無抵抗の子供だ。(読心されたか? 私はされてないようだが。)

ベス   :……くっ……。

ロベール :お子様をロープで縛って連れてきてくれるとは、ご苦労だったね?

騎士C−1:そいつは強かったと言ってるだろう!

騎士D−1:ああ、強い。

騎士C−1:そいつを連れてたエルフも強かった!

ロベール :はぁ? ……待てよ、エルフが連れていたと言ったな。

騎士C−1:そうだ!

ロベール :……え……それ、連れてきたら……ぇ? ……ひ……ひぃぃぃぃっ!!!

G   M:ロベールは、マリアを見て明らかに怯えています。
      10レベルといえばグレーター・デーモンと同じレベルですから、
      一般人の反応としては無理もありません。
      指揮官級の軍人としてはアレですが。

マリア  :ほう。ぬしとはよい話し合いができそうじゃのう。

ベス   :(剣を抜きながら)させません! 邪悪はこの場で滅します!

マリア  :ほう。ファリスのへっぴり腰でロープを切ってくれるのか?

ロベール :(半泣きで)や、やめてぇ……挑発しあわないでぇ……。

ベス   :くっ……しかし……。

騎士D−1:それより、テイラー司祭、この空はどうなっているのですか?

ベス   :わかりません。個人的には、空の秩序を乱してけしからんと感じます。

マリア  :そういう問題か。

ベス   :おのれ……ファリスを愚弄するか!?

マリア  :我とてアホではない。ぬしらの態度次第では、八方丸く収める用意はあるぞ。

ベス   :……。←無言で剣を振り上げる

ロベール :い、いや、待って待って!! だめぇっ! だめだからぁっ!!

G   M:では、そのタイミングで、走ってきたレイディアたちが森の中から
      姿を現します。不意打ちは無し。彼我の距離は30メートル程です。

レイディア:(息を切らしながら)……そうよ……待ちなさい!

マリア  :レイディア!!!

G   M:ロベールからすれば、奪還しに来たということは、
      やはり人質の価値ありと考え直します。
      冷静に考えてみれば、どう考えても無生物には見えませんし、
      奪還しに来るくらいなら10レベルの強さではないと判断します。
      となると、闖入者に向かって、常道の飛び道具を準備します。

ロベール :き、騎士隊A及びB、弓の準備を。

レイディア:(あれが指揮官か……。)

G   M:騎士隊A及びBが、足元に置いてあった弓矢を拾います。

レイディア:こっちに敵意はないわ! マリア、そのロープ、外していいわよ!

マリア  :うむ。ふんっ!!

G   M:マリアが力を入れると、腕ごと胴体をぐるぐる巻きにしていたロープが、
      バラバラになって地面に落ちます。

ロベール :ひいいいいいっ!!!

G   M:ロベールは尻をもちをついたまま後ずさり。
      車輪騎士団の反応は様々ですが、おおむね怖がってます。
      特に、弓を持っていた騎士のほとんどは、近場の脅威に備えるべく、
      再び弓を捨てて剣を構えようとします。ベスは唖然として、手が止まります。
      ロベールは、マリアの異常な筋力を目の当たりにして、探知通り
      本当に10レベルの無生物であるという可能性も考慮に入れます。ただ、
      10レベルのそういう相手に対しては、手持ちの駒ではどうにもできません。
      唯一、ベスのバニッシュなら効くかもしれませんが、
      目の前の怪物を始末したところでまだ怪物使いたちが控えているので、
      勝算は低いと判断します。

ロベール :……は、は、話を聞こうじゃないかっ!

レイディア:私の話を聞いて! 今は人間同士で……って、え?

トゥエリ :一足飛びで話が進んでるみたいデスね。

フアナ  :……むしろ、好都合……。

ロベール :(……落ち着け……交渉してくるということは、背後関係を誤解している筈。)

レイディア:(ヘタレのお坊ちゃんがびびってるわね。それなら、いっそ対等に……。)

ロベール :こちらはオランの騎士だ。ダークエルフの率いる野盗の討伐に来た。

レイディア:奇遇ね。こっちの目的は首領の殺害。首を渡す用意はあるわ。

ロベール :……殺害……まさか、怨恨か?

レイディア:ただの仕事よ。で、この空の原因は、邪神の降臨によるもの。

ロベール :……邪神…………ファラリスか……。

レイディア:さあ。なんにせよ、ろくなもんじゃないわね。

ロベール :しかし、それが本当だとしたら、世界はもう……。

G   M:ジェネラル技能8レベルのロベールには、
      コール・ゴッドの性質に関する詳しい知識がありません。
      情報を得ることができればまた別ですが、使い手そのものが少ないことから、
      それもまず無理な話です。

レイディア:暗黒神のコール・ゴッドは、生贄が必要な上に、1分しか持たないわ。

ロベール :……1分か……1人の生贄で1分ということか?

カトレア :はい。フェネスの高司祭様に教わったので、間違いありません。

ベス   :邪悪な輩は生贄のために人をさらうと聞くが……。

ロベール :そこのエルフに探知を妨害される前は、砦の中に10人ほど篭城していた。
      1人はダークエルフで、残りは人間だ。

レイディア:あるいは、降臨した神が生贄を呼び寄せる可能性もあるけど。

カトレア :ははは。あまり考えたくない可能性ですけどね。

ベス   :笑い事ではない!!

ロベール :つまり、時間稼ぎは無駄ということか。

レイディア:理論上は、神が降臨した肉体を滅ぼせばいい筈なんだけど……。

フアナ  :……また、降臨させられたら……。

ロベール :要するに、そのコール・ゴッドとやらの元を絶てばいいのか。

レイディア:そうよ。司祭を殺すのが一番手っ取り早いわ。

ロベール :そうだとすると、降臨の合間に暗殺するのが常道だな。

レイディア:それか、生贄にされないために、わざと降臨中を狙うか、ね。

フアナ  :……降臨してる間は……降臨できない……。

ロベール :……どちらも難しいな……。

レイディア:カトレア、例の話を。

カトレア :はい。生贄の器によっては、神はそのまま世界にとどまるんです。

ロベール :…………つまり、邪神が復活するというわけか……。

フィーエル:あうー。

レイディア:もしそうなったら……。

ロベール :……そうなったら?

フアナ  :……神の肉体になった生贄を……滅ぼすしかない……。

レイディア:それか、世界の終末まで逃げて過ごすかね。

カトレア :ま、逃がしてくれるかも微妙ですけどねー。

ロベール :……神が降臨しているのに、こちらに危害が及んでいない理由は何だ?

カトレア :何なんでしょうねー。神様って気まぐれですからねー。特にファラリスは。

ベス   :……おのれ……弟神の神官の分際で、ファリスを愚弄するかっ!?

レイディア:司祭様、ファリスの威光を世に示すため、ここは力を合わせましょう。

ベス   :……ふん。勝手についてくるといい。

ロベール :事態はわかったが、手柄だけ譲ってもらえる条件は何だ?

レイディア:こちらの突入を黙認することと、あと、ちょっとした援助がほしいわね。

ロベール :具体的には?

レイディア:うちのエルフに使った探知能力を、相手に使ってもらいたいの。

フアナ  :……あとは、魔晶石の提供……。

ロベール :残念ながら、魔晶石はない。……探知能力か……いいだろう。

G   M:圧倒的戦力差を前にして無条件降伏を突きつけられるか、
      悪くすれば口封じのために皆殺しの可能性もあったロベールにとって、
      これは破格の提案です。冒険者たちが勝てば手柄が転がり込み、
      負けてもそれを探知して逃げればいいだけですから。
      ロベールは騎士隊に命じ、さっそく人形を再設置しに行かせます。
      (ころころ)なお、フアナ(ソーサラー7、シーフ7)、
      トゥエリ(ファイター10)、ディース(ファイター10)の3人は、
      設置途中の人形に偶然囲まれ、以上の情報を探知されました。
      カウンター・センスを唱えていないので、本人は気付いていません。
      そして、この情報により、ロベールは冒険者たちの勝利を確信します。
      仮に敵がエルダー・ドラゴン級の強さの魔神を出してきたところで、
      砦内部のサイズの関係上生命力がそれほど高くなることはなく、
      この強さの冒険者たちならば、犠牲が出ようとも押し切れると
      計算したのです。(実際、魔神将の生命力でも50が限度なので、
      間違った推理ではありません。)

ベス   :突入の際には、私についてきてもらおう。

レイディア:いえいえ、至高神の司祭様のお手を煩わせるほどのことでは……。

ベス   :……そうか?

G   M:前に会ったときに暴力も暴言もなかったレイディアは、
      ベスに大しても比較的好印象を得ていました。
      (冒険者はアウトローなので将軍は必ずしも目上ではありませんし、)
      将軍のロベールよりも司祭のベスに丁寧に接しているので、
      心証は非常にいいです。






仲間が全員揃ってからは、交渉も作戦も完璧でした。しかし、いくつもの誤算があります。
一つは、戦闘能力のない者は探知できないという、ロベールの探知能力の不備。
一つは、仲間同士で、そして、車輪騎士団とも牽制しあったことによる、出遅れ。
そして、決定的な一つは、ピニーズの身柄を相手に押さえられてしまったことです。
その頃、砦の内部では……。





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