空を見上げて思うこと








G   M:ある日の夜。とある村の、ある家の中で。

エリス  :クロヴィスの馬鹿! 何やってんのよ、もうっ!

クロヴィス:エリス!? ……来て、よかったの?

エリス  :お葬式なんかもう終わったわよ。子分がグズなせいで、泣いてる暇もないわ。

クロヴィス:……ご、ごめん……大変なときに……。

エリス  :いいわよ。でも、あんたまで死んじゃったら、承知しないんだからね!!

クロヴィス:……あ、ありがとう……。

エリス  :ふん。親分が子分の面倒見るのは、当たり前でしょ。(えっへん)

クロヴィス:子分っていうか、一方的にいじめられてるだけのような……。

エリス  :ていうか、かわいくて優秀な私の言うことが間違ってるわけないしね。

クロヴィス:……うん、わかったよ、親分……。

エリス  :で、熱はどう?

クロヴィス:もうだいぶ下がったんだけど。

エリス  :どれどれ……いつもと変わらないわよね、これ。

クロヴィス:や、やめてよっ!!

エリス  :なによ。心配しなくても、貧弱なあんたの風邪なんかうつらないわよ。

クロヴィス:そ、そうじゃなくて……。

エリス  :けっこう元気そうじゃない?

クロヴィス:……ほとんど治ってたけど、みんなにうつしたらいけないからって……。

エリス  :……あんたの母親の考えそうなことね。

クロヴィス:ほっといてよっ!

エリス  :元気なら問題ないわね。今から行くわよ。

クロヴィス:……ど、どこに?

エリス  :いつものところに決まってんでしょ!!






G   M:2人は、町外れの星が見える丘へと走ります。

クロヴィス:……はぁ……はぁ……あんまり無理させないでよ……。

エリス  :別にいいでしょ。熱下がってたし。

クロヴィス:…………。

エリス  :……。

クロヴィス:………。

エリス  :…………お母さん、死んじゃったね……。

クロヴィス:……うん……。

エリス  :…………。

クロヴィス:…………。

エリス  :死んじゃった人は、お星様になるんだよね。

クロヴィス:……うん。お父さんとお母さんが言ってた。

エリス  :あの中に、お母さんがいるのかな?

クロヴィス:……いるよ、絶対。

エリス  :……くまさん、かわいそうだよね。

クロヴィス:……?

エリス  :こぐまさんが蹴られてお星様になっちゃったら、
      くまさんはどうやって生きていくの? 寂しいよね。

クロヴィス:くまさんたちは、こぐまさんを蹴ったうさぎさんを追いかけたんだよね。

エリス  :そんなことしても、こぐまさんは帰ってこないのに?

クロヴィス:……。

エリス  :でも、追いかける相手のいないくまさんは、どうすればいいの?

クロヴィス:……くまさんたちで、仲良く過ごせばいいんじゃないかな?

エリス  :こぐまさん、いなくなっちゃったのに?

クロヴィス:自分のことでみんながいつまでも泣いてたら、こぐまさんも悲しいと思う。

エリス  :……でも……お母さん、寂しくないかな?

クロヴィス:お母さんのお母さんたちと一緒にいるから、寂しくないよ。

エリス  :だけど、私は寂しいよ……。

クロヴィス:いつか、エリスがお星様になったら、会えるよ、きっと。

エリス  :嫌だよ、お母さんのいない世界なんて……今すぐ会いたいよ……!!

クロヴィス:それでも、エリスにはここにいてほしい。

エリス  :……そりゃ、ずっと一緒だったから……。

クロヴィス:違うよっ!! 好きだからだよ!!! エリスを守りたいからっ!

エリス  :えっ……!!!

クロヴィス:僕は弱いけど、強くなるから! だから……。

エリス  :……私で、いいの? いっぱい意地悪したのに?

クロヴィス:エリスがいい! エリスじゃなきゃ嫌だ!

エリス  :……私、女の子なんだから、ちゃんと守ってよ。

クロヴィス:うん。絶対守る。

エリス  :…け……結婚して……子供ができても、死んだら許さないんだから。

クロヴィス:僕は死なない。ずっとそばにいるよ。

エリス  :……約束、だからね。

クロヴィス:うん、約束。大きくなったら結婚して……ずっと、2人でいよう。

エリス  :うん、約束……2人だけの……。





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