鬼嫁








G   M:そうこうしてるうちに、1週間が経過します。

レイディア:月日が経つのは早いもんね。

G   M:依頼を待ちながらいつも通りに過ごしていたある日、
      冒険者の店に、3人連れの客が現れます。
      中心に人間の男、両脇にそれぞれ人間の女とドワーフの女。
      男は両腕を、片方ずつ取られていますね。
      人間の2人は一般人のようないでたちです。

ディース :けっ。よそでやれ、よそで。

レイディア:アリエルの男版?

トゥエリ :それなら正常なんデスけどね。

ディース :いや、アリエルのあのローテーションは立派に男の敵だな。

マリア  :父上でも、あそこまであからさまにはやらぬぞ。

フィーエル:あう。さんかくかんけい。

レイディア:へぇ……難しい言葉知ってるわね。

フィーエル:ディースさんに、教えてもらった。

レイディア:変なこと教えてるんじゃねぇよ。こら。

ディース :いてててて。後ろからは卑怯だろ。

カトレア :ははは。いつもながら、愉快な人たちですねー。

G   M:女性2人は何やらもめてますね。男性は心底困りきった顔です。

ディース :お、修羅場か? くしししし。

人間女  :ユリィは私のなんですから。ドワーフなんかに取られてたまりますか!

ドワーフ女:ユリィは私のなのですよ。これはマイリーの啓示なのですよ。

トゥエリ :そんな啓示は聞いたことがないデスよ。

レイディア:ふん。くだらないわね。

カトレア :そもそも、女性連れのカタギが、何しに来たんですかねー?

ディース :ろくな用じゃねーのは確かだな。

レイディア:まあ、お金もらえりゃ何でもいいわよ。詳しい様子はどう?

G   M:ここまで熱烈に奪い合いされる程の容貌でもないです。
      かといって、異性に積極的なタイプにしては、
      オドオドしすぎている気もします。

ディース :そんなんどうでもいーよ。うらやましいこって。

トゥエリ :見た目だけでは量れない何かがあるんじゃないデスか?

フアナ  :そうだよ。だって、ユリィはわたしの婚約者だもん!

ほか一同 :……ええええええええええ!?






フィーエル:(ころころ)センス・マジック。あう、成功。

G   M:男性の首飾りが反応します。マジックアイテムですね。

フィーエル:エートの予想、当たった。

フアナ  :ってわけだから、ばいばい。もう来ないでいいよ。

G   M:そして、フアナのしゃべり方も、別人のように明るくなってますね。
      とても快活。そして、驚くべきことに、時折笑顔まで見られます。

人間女  :エルフの分際でふざけたこと言ってんじゃないわよ!

ドワーフ女:エルフは引っ込むといいのですよ!

フアナ  :エルフが人間に恋したっていいでしょ? 不細工と短足は黙っててよ。

人間女  :短足! 短足だってさ!

ドワーフ女:あなたは不細工の方でしょうが!

人間女  :てめえは短足で不細工だろうが!

フアナ  :落ち着こうよ。世の中、顔だけじゃないんだよ。

レイディア:ちょっとフアナ。どういうことよ!? 婚約!?

フアナ  :邪魔しないでよ。だいたいさ、酒漬け女の出る幕じゃないよ。

ディース :うん。これは言い返せねーな。

レイディア:さ、酒漬け……とにかく、説明してよ。

フアナ  :わたしがユリィの婚約者だもん。ユリィって、いい名前だよね。

G   M:明らかにおかしいですね。しゃべり方まで普段と違いますし。
      なんというか、表情も含めて、快活な感じになってます。

トゥエリ :逝っちゃってますネ。

レイディア:でも、お酒のこと知ってたってことは、憑依じゃないのよね?

ディース :くししし。酒漬け女ってのは一本取られたな。

フィーエル:フアナさん、マジックアイテムに、やられてる。あの首飾り!

ディース :いや、そこは大体わかるけどよ。

レイディア:そこのユリィって人、事情を説明して。

ドワーフ女:私のユリィになんて口利いてるのよ!

人間女  :ユリィは私のだって言ってるでしょう。この腐れドワーフが!

フアナ  :レイディアは、わたしのこと怖くないのかな? (にっこり)

レイディア:……ひっ……こ、ここはいったん引くわよ。

ディース :そこでびびるなよ。

レイディア:……じゃなくて、平和的に話をしない?

G   M:男性は今のうちにと、店のおばちゃんと話をしています。
      依頼内容は、この状況をどうにかしてくれ、だそうです。

人間女  :何親しげにしゃべってんだよ、この糞ババア!

ドワーフ女:あなたは関係ないでしょう。引っ込んでなさい!

フアナ  :おばちゃん。横取りはだめだよ。

ディース :女同士だとああなるわけか。

おばちゃん:はぁ。(嘆息) というわけなんだけど、頼まれてくれるかい?

レイディア:受けるしかないわね。最強の仲間が敵に回りそうなのは怖いけど。

ユリウス :だ、誰でもいいから何とかしてください!

人間女  :ユリィが困ってるじゃないの。どきなさいこのカス共!

ドワーフ女:カスって言う奴がカスなのです!

フアナ  :頭、足りてないもんね。かわいそうだよ。

フィーエル:まず、その首飾りを、見せて。(ころころ)11。

G   M:何もわかりません。

レイディア:これは、下手にしゃべれないわね。

G   M:レイディアは人間の女ににらまれます。

トゥエリ :(ころころ)16デス。

G   M:異性からの人気を得ることができる、魔法のアイテムですね。

トゥエリ :そっと外してみましょうかネ。

G   M:なぜか外れません。

トゥエリ :駄目デスね。

マリア  :まあ、そうであろうな。

ディース :鑑定なら俺に任せろ! (ころころ)10。

トゥエリ :それは任せられませんネ。

ディース :お前、最近生意気だぞ!

カトレア :(ころころ)14です。

G   M:トゥエリと同じですね。

マリア  :ほとんど何もわかっておらぬではないか。仕方ない。我が行くか。

人間女  :このメスガキ、馴れ馴れしく近付いてんじゃねえ!

ドワーフ女:ユリィ、こんな子供より私のがいいですよね!?

フアナ  :人外は引っ込んでてよね。

レイディア:ちょっと!! 今のはひどいんじゃない!? 怒るわよ!

マリア  :ぬしが落ち着け。普段のエルフの娘は、そのようなことは言わぬ。

フアナ  :胸無し同士、小さい胸吸いあってたら?

レイディア:こっ、このやろう……。

マリア  :ま、まだ日が高いというに、そのような甘美な蜜を……。

レイディア:夜でもやらないわよ!!

ディース :安心しろ。無い方が好きな奴もいるからよ。

レイディア:お前は、せめて10回に1回くらいは空気を読めよ。

マリア  :首飾りを見せてもらうぞ。(ころころ)事典なしで17じゃ。

G   M:では、能力が完全にわかります。






名称:ライクアコミック・パーティー
宝物鑑定の目標値:12/16
魔力付与者:不明
形状:首飾り
効果:この首飾りには呪いがかかっており、男性が装着した場合、外すことはできません。
このアイテムは男性が装着したときのみ効力を発揮します。
装着者の周囲10mに働きかけ、範囲内から女性を無作為に抽出し、
最大3人に効力を発揮します。この効果は同種族の者は同時に最大1人しか対象としません。
このとき、標的は男性と種族が異なる者が優先され、
人間、エルフ、ハーフエルフは、それぞれ別の種族とみなされます。
もし範囲内にドワーフ、グラスランナーの女性がいれば、優先して効力を発揮します。
標的となった女性は目標値21〜23(維持している魔神のモンスターレベル+11)の
抵抗ロールを行い、失敗すると、男性に恋をしてしまいます。
この効果に対して無警戒であった場合、抵抗ロールをせずに、
抵抗に失敗したとみなして構いません。
同時に複数の者が標的となった状態になった場合は、標的同士が口げんかを始め、
男性の愛を奪い合うことになります。装着者の男性は、女性から逃げきるか、
呪いを解除するか(解除の目標値:上述と同じ)、
諦めて状況に慣れるかするしかありません。
この能力の影響下にある女性は、その達成値がこの能力のそれを上回る場合を除いて、
この能力以外が精神へ影響を及ぼすことはありません。
なお、離れてしまった場合でも、距離が1km以内であれば、
恋をしている標的は装着者の位置を察知できます。
宝物鑑定の達成値が12の場合、
異性からの人気を得ることができる魔法の宝物だとわかります。
宝物鑑定の達成値が16になって初めて、全ての効果がわかります。
なお、この効果はデーモン・トラップに捕らえられた上位魔神によって維持されており、
その魔神を倒せば効果が途切れ、別の魔神がトラップに捕らえられるまで使えなくなります。






マリア  :わかったぞ。奴らから少し離れるとしよう。

G   M:やはり、3人で言い争ってますね。

ディース :女はこえーな。

レイディア:否定する気もなくなるわ。(嘆息)

トゥエリ :呪いの効果だとしても、軍師が敵に回りましたネ。

レイディア:仕方ないわ。マリア、事典でそのアイテム調べて、ここの全員に見せて。

マリア  :我はまだまだ役に立つであろう?

レイディア:……マリアはずっと仲間よ。お願いするわ。

マリア  :うむ。事典のページを全員に見せるぞ。

G   M:なお、現在の解除の目標値は21です。

レイディア:つまり、今は効果を維持してる魔神が10レベルってことね。

フィーエル:リムーブ・カースは?

カトレア :僕が8レベルで知力+3、気絶するまで拡大すれば、5倍+4で基準値15。
      つまり、出目6以上で成功ですね。

レイディア:成功率は36分の26か。約3分の2ね。

トゥエリ :失敗したらどうなりますかネ?

カトレア :んー。魔力が上がるまで、僕は試みることができなくなります。

レイディア:そうなれば、別の解除法を探るしかないわね。

トゥエリ :成功すれば、魔神が出てくるんデスかね。

レイディア:さあ。魔神のお好みなんじゃないの。出てきたら倒すけど。

マリア  :しかし、魔神が出てきた場所に一般人がおると、やりづらいのう。

レイディア:取り巻きは無力化する必要があるわね。

カトレア :僕は精神力を温存しないといけませんけどねー。

マリア  :我の本で精神を削れるが、フアナが逃げると面倒じゃのう。

レイディア:ええと、3人ともが独占したいわけだから、誰かと共闘すればいいのよ。

トゥエリ :確かに、一理ありますネ。

フィーエル:あう。なるほど。でも、誰と?

レイディア:フアナに決まってるでしょうが。

カトレア :しかし、3人固まってると意思の伝達が。

レイディア:タング! (ころころ)成功。これでエルフ語が話せるわ。

トゥエリ :確かに、一般人とドワーフだと、エルフ語を話せる可能性は低いデスね。

レイディア:(エルフ語で)フアナ、あんたに協力したいの。

フアナ  :(エルフ語で)どう協力してくれるの?

レイディア:(エルフ語で)そっちの人間の注意を引いてて。ドワーフを脱落させるから。

フアナ  :(エルフ語で)やっぱり、レイディアは頼りになるよね。ありがとっ。←笑顔

G   M:フアナは、人間の女と口論を始めます。

フアナ  :最後に勝つのはわたしだよーだ!

人間女  :後から出てきて偉そうにしてんじゃねえよこのカス!!

マリア  :今のうちじゃ。

レイディア:タング! (ころころ)成功。
      (ドワーフ語で)あのエルフの婚約証書がある場所を聞き出したんだけど。

ドワーフ女:(ドワーフ語で)そんなの信用できないですよ。

レイディア:(ドワーフ語で)あ、そう。なら、あの人のご両親に届けに行くからね。

カトレア :では、皆で裏路地に。

ディース :こっちの道、人通り無し。

トゥエリ :こっちも大丈夫デスよ。

フィーエル:ぼくは、エートと2箇所で見張る。

G   M:案の定、ドワーフがつけてきますね。
      (残り2人が牽制しあってたから、簡単に抜け出せるんですよね。)
      (ころころ)尾行が平目で6なので、丸わかりです。不意打ち判定は5。
      そちらは、(ころころ)マリアが18ですね。
      (彼女、不意打ち判定のときだけ目が異常にいいです。)不意打ち可能です。

レイディア:マリア、組み合いで口をふさぐのよ。

マリア  :わかったぞ。

G   M:(ころころ)ファイター3レベルでは敵いませんね。組み付かれました。

レイディア:私はマリアの本を開いて、精神攻撃するわ。

G   M:(ころころ)抵抗失敗です。ダメージは5点通りました。
      (ころころ)あ、早々と組み付きから抜け出しましたね。

レイディア:マリアを信じて、また本を開くしかないわね。

G   M:(ころころ)抵抗失敗で、ダメージは6点通りました。
      組み合いはラウンドの最後なので、その前にマリアにフォースを使います。
      (ころころ)抵抗されて、1点通りました。プリースト2レベルなので。

レイディア:マリア!

マリア  :大丈夫じゃ。組み付くぞ。

G   M:(ころころ)回避は当然失敗です。

レイディア:本を開く!

G   M:(ころころ)抵抗失敗で、5点通りました。
      残り精神力1点です。(ころころ)脱出できません。

レイディア:これで終わりね。この状況で目は閉じられないし。

G   M:(ころころ)抵抗失敗で、6点通りました。昏倒します。
      知力も高くないので、その本の正体を考えてる間にやられました。

ディース :終わったかー?

トゥエリ :なんとかなりましたカネ。

カトレア :んー。の、ようですねー。

レイディア:なら、マリアと一緒に両肩持って担いでくわ。

マリア  :我もやるのか?

レイディア:道で倒れてたので善意で連れてきました、って風を装うのよ。
      私ら信用あるから、通りすがりのお偉いさんとかに見られなきゃ大丈夫よ。

マリア  :仕方ないのう。

ディース :レイディア、お前の発想、こえーよ。

レイディア:そう?

トゥエリ :悪知恵を働かせたら、フアナにも匹敵しますネ。





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