栄光会規








レイディア:私は、お金もあるし、お酒の質をランクアップさせるわよー。

ディース :うわ、駄目人間がいる。

レイディア:奴隷、何か言った?

ディース :いやぁ、こりゃまたおいしそうなお酒っすねぇ。

トゥエリ :本物はひたすらアルコールの量を増やしますからネ。まだマシデスよ。

G   M:さて、冒険者の店のレイディアに来客です。

ディケイ :呼び出しっす。相手は、"「絶えることなき」水の王"キルシュさんです。

レイディア:……お前が来いよ、が通じないレベルの大物ね。

ディース :伝説の駄目人間、栄光の4人の一角か。

トゥエリ :しめられるんじゃないデスか?

レイディア:じゃあ、ディース、トゥエリ、カトレア、ついてきて。

ディース :お、おおせのままに、でいいのか?

トゥエリ :わかりましたヨ。

カトレア :んー。いいですよー。

G   M:呼び出し場所は寮5階、キルシュの私室です。

レイディア:……ご、5階……貴族でもないのに……。

G   M:キルシュの部屋に通されます。部屋の中の荷物は荷造りされていますが。

キルシュ :はじめまして、レイディア・レインフィールド。"水の王"キルシュよ。

レイディア:はじめまして。噂に名高き「絶えることなき」水の王。

ディース :引越しでもするのか?

キルシュ :レイディア・レインフィールドに水の王の位を譲ることをここに宣言するわ。

レイディア:は?

キルシュ :家に帰っても、家継がされたりするだけだから。
      本当はずっとここにいたかったんだけど、
      うっかり単位取りすぎて卒業要件満たしちゃったかしら。

カトレア :……どうなってるんですかねー、ここの学院は?

レイディア:特待生の私に聞かれても困るわ。

トゥエリ :水の王が退位するという噂は、本当だったんデスね。

レイディア:え、栄光の四人らしからぬミスっすね。

キルシュ :グラースの授業だから、落とすと思ったのよ。
      それが、鉛筆転がしたら、受かっちゃったみたいで。グラースが悪いのよ!

カトレア :復讐したくはありませんか?

キルシュ :復習なんかするわけないわ! 
      グラースめ……後でアクトゥスとけっこう同じ答えになってるの気付いて、
      単位落として下さい、って泣いて頼んだのに、聞いてもらえなかったわん。

トゥエリ :……で、卒業、退寮というわけデスか。

キルシュ :栄光の四人には大権があるのん。指名大権よ。

トゥエリ :何デスか、それは?

キルシュ :長きにわたって学生として君臨した王たちは、多くの人間を見てきたわ。
      簡単にいうと、次の王にふさわしい駄目人間がわかるかしら。
      レイディア、冒険者としてふらふらしてるあんたなら、
      魔法を使いこなせてもそうそう出世はしないわ。
      もはや王すら一目置く影響力を持つあなたは、この際諦めて王になるべきよ。

レイディア:……お断りすることって、できますか?

キルシュ :すでに四人の王が承認してるわ。そろそろ広まる頃かしら。

レイディア:そ、そんな……。

キルシュ :ちなみに、本人が知らない間になってる場合もあるわね。

トゥエリ :嫌な予感がするんデスけど、同様に退位の噂がある地の王は?

キルシュ :後継はヒースクリフを狙ってるらしいわね。
      あなたたちからはこれ以上選ばれないと思うから安心していいかしら。

G   M:まだ知名度が低いので、名前だけでは全くわかりませんね。

レイディア:……ヒース……誰っすか?

ディース :知らねーな。

トゥエリ :知りませんヨ。

キルシュ :ヒースクリフは例の最年少特待生よん。仏のハーフェンんとこの。
      あの子はまだ素質だけだけど、絶対に大物になるわん。
      私たちが見込んだんだから、確実よ。でも、きっと導師にはなれないわねん。
      特待生で三年間も不真面目にやってたあなたには負けると思うけど、
      王の資格は充分よ。

レイディア:……嫌な資格っすね。

キルシュ :絶えることなき水の王が絶え、動かざる地の王すら引き剥がされた。
      学院の次代を担うのはあなたよ。あなたにこれを授けるわ。

G   M:レイディアは水の王の指輪を手に入れました。効果は特にないです。

レイディア:……丁重に部屋にしまっておきます。

キルシュ :王の地位があれば、いろいろできるわ。がんばってねん。






かくして、レイディアは水の王の地位を得ました。






レイディア:とんでもないものを押し付けられた気がするわ。

カトレア :すぐ指名権を行使して、他の人に同じ思いを味あわせましょう。

ディース :それって、八つ当たりじゃね?

カトレア :んー。確かにそうですねー。では、やめましょう。






その夜、レイディアはキルシュにより、酒宴に招かれます。参加者は以下の通り。






"「動かざる」地の王"ロタール

元"「絶えることなき」水の王"キルシュ

"「流れゆく」水の王"レイディア

"「猛る」火の王"マグノリア

"「自由なる」風の王"ランディ

"5階の雄"ウィット

"4階の雄"リコリス

"3階の雄"ローディス

"2階の雄"マキール

"1階の雄"アクトゥス






実は、この集まりはロタールの送別会も兼ねてたりしますが。
ともあれ、学生の高名な有力者たちと友好関係を築くことができました。






G   M:さて、宴も■■プリンスホテルなわけですが。

キルシュ :さあ、準備は整ったかしら。

レイディア:え、何の準備っすか?

ロタール :うむ。明日正午より、代表戦を行う。

キルシュ :5軍に分かれて戦って、今後の王の序列を決めるってわけかしら。

レイディア:そ、そんなんあったんっすね。

リコリス :私も知らなかったよ〜。

レイディア:ちなみに、これまでの序列は?

キルシュ :そんなの、ないわん。

マグノリア:初の開催だ、女。

レイディア:……といいますと?

ロタール :この間、お前らが寮でやっていたのが、面白そうだったのでな。

ランディ :君ら、騒ぎすぎだよ。

レイディア:申し訳ないっす。で、序列が低いと、なんかあるんすか?

キルシュ :それはもう、えらいことになるかしら?

ロタール :うむ。えらいことになる。

レイディア:拒否権は、ないっすよね?

ロタール :強制はしないが、不参加の場合にどんな不利益があるかは知らん。

レイディア:……そういうの、世間一般では強制っていうんですけど……。

キルシュ :でも、私たち4人は別の軍を率いるから、安心していいわ。

ランディ :現栄光の四人各自と、キルシュの軍だね。1つの軍は5人だよ。

レイディア:明日までに、4人探して来いってことっすね。

マグノリア:ああ。

レイディア:参加条件は、学生だけっすか?

キルシュ :学院関係者なら誰でもいいわ。ただし、導師は不可かしら。

レイディア:どんな戦いかは知りませんけど、バレたら怒られそうっすよね。

ランディ :バレなきゃいい、とも言うけどね。

レイディア:どんなルールなんすか?

ロタール :明日、全てが明らかになるであろう。

レイディア:つまり、とりあえず面子を集めろってことっすね。

ロタール :うむ。

キルシュ :あなたの仲間の人数は、ちょうどいい筈よん。

レイディア:……やるしかないみたいっすね。

ロタール :期待しているぞ、水の王よ。






その後、寮に戻ったレイディアはフアナ、トゥエリ、ディース、フィーエルに
参加を求めます。トゥエリとフィーエルは快諾。ディースも永久奴隷なので断れません。
フアナも案外あっさりと承諾し、参加メンバーが決定しました。
なお、マリアとカトレアは部外者なので参加できません。
観戦については、センス・マジックによる正体の露見を懸念し、マリアは留守番。
カトレアは元々乗り気でなく留守番となりました。






次の日、寮に出向いたレイディアたちは、説明を受けます。
まずは、ギャラリーを含めた全員が裏庭に集まり、審判団によりルールが公開されます。






■ルール

・参加者は5軍に分かれて戦う。1軍は5人とする。

・1軍1名ずつ、以下の役職を割り振る。将軍・副官・上級騎士・下級騎士・兵士。

・軍ごとに指定された色の布を、腰の衣服の後ろ側に挟む。
 ただし、結ぶなどして固定してはいけない。

・布の端には、役職ごとに同一の記号が刺繍されている。

・刺繍を故意に汚損・欠損することは反則となる。

・自分の役職と異なる記号の布を腰につけることは許されない。

・布は生命線であり、いかなる理由であれ、布が腰から離れた者は離脱となる。

・離脱者は、外された布を、腕など見えやすい場所に巻いておかなければならない。
 ただし、離脱者は、離脱していない自軍の将軍が視界内にいる場合のみ、
 布を手に持つことが許される。

・離脱者は、上記以外の一切の行動が不能になり、その場にとどまる。

・将軍は自軍の離脱者の布を、腰に付けなおすことができる。
 この場合、離脱者ははじめから離脱していなかったものとみなされる。

・将軍が離脱すれば、その軍の未離脱者は即座に全員離脱となり、その軍は負けとなる。

・負けた軍の布は、その軍の者を離脱させた者に、それぞれ分配される。
 ただし、その布が奪われたとしても、それにより直接点数が増減されることはない。

・誰がどの役職であるかは審判団に対する事前申告により決定される。
 つまり、自軍以外の者がどの役職であるかは、布を取ってみなければわからない。

・時間切れの場合、自軍が離脱に追い込み、かつ、
 その状態が時間切れまで続いた者の得点を、離脱者の役職に応じて加算する。
 配点は、「将軍0点、副官10点、上級騎士5点、下級騎士3点、兵士1点」。
 このとき、他の者を離脱に追い込んだ者が離脱していても、
 その離脱した者の軍が全滅していない限りにおいて、得点は加算される。
 つまり、(例えばある兵士が)離脱者が出ていない他軍の将軍を2人倒せば、
 38点が加算され、時間切れまで自軍の将軍が逃げ切れば
 (例えばその兵士が離脱したとしても)負けはないことになる。
 端的に言えば、将軍がやられた軍自身の得点は必ず0点になるわけである。

・同点の軍同士は同順位となり、それらが共に1位の場合、勝負は引き分けとなる。

・自軍の者を離脱させることも可能だが、得点は増減しない。
 スタート地点は、5階階段前、3階端、1階階段、正門内側、裏庭隅A、裏庭隅B
 の中から、無作為に決定される。

・移動可能範囲は、建物内の廊下・階段と、敷地内の建物外全て。

・打撃により故意にダメージを与えることは禁止する。

・直接攻撃魔法は一切使用禁止。

・使い魔は一切使用禁止。

・反則者に対する処置は、審判団の自由な裁量による。



■数値的なルール

・布を引き抜こうとして攻撃した場合、命中すれば布が抜ける。

・「攻撃」の宣言で、相手の布を抜こうとすることができる。

・相手の正面から布を引き抜く場合、部位狙い扱いとなり、攻撃に−2の修正。
 ただし、正面から引き抜こうとした側は無防備になるため、
 それに対する相手の攻撃に−2の修正はかからない。それに対する反撃も同じ。
 (要するに、最初の1人だけ、正面からの攻撃に−2。)

・便宜上、相手の攻撃にペナルティーがかからない状態を「隙ができた」と称する。

・不意打ち判定は行わない。相手の後ろを取れば、必ず先制攻撃できる。
 (もちろん、敏捷度の高い敵を相手にすれば、先に射程外に逃げられる可能性もある。)

・相手が自軍に攻撃してきたときのみ攻撃し返す「カウンター」の宣言が可能である。
 (相手の−2修正での先制攻撃を許すものの、自分は−2修正は受けないで済む。
  格下の相手に有効な戦術だが、相手がカウンター覚悟で攻撃してくるとは限らない。)

・転倒した場合、6分の3の確率で仰向け、残り6分の3の確率でうつ伏せに倒れる。
 うつ伏せに倒れた者に対する攻撃は、1ゾロ以外で命中。
 仰向けに倒れた者は、攻撃されれば、起き上がろうと試みることができる。
 (スリープ・クラウドで眠っていれば、攻撃される前に抵抗を行える。
 抵抗に失敗すれば、隙ができた状態で攻撃される上に、眠ったまま。
 抵抗に成功すれば、目を覚ますが、転倒中のため、
 隙ができた状態で1度だけ攻撃されることになる。)

・「なぎ払い」等、複数攻撃が可能な戦闘オプションは使用禁止である。





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