汗だく接待 おかわり一杯目








G   M:3年前、ルコとアリエルが仲良くなる前の話。
      アリエルの部屋のベッドに腰掛けて、2人が話しています。

アリエル :そうかい。それは大変だったね。
      (結果的には、こちらの思惑通りになったわけだけど。)

レイディア:まったく、失礼にも程があるわ。これだから一般生の男は……。
      (お金で受かった劣等性なんかと、一緒になんかされたくないわ。)

アリエル :僕も一応、一般生なんだけどね。
      (こう言えば、慌ててくれるんだよね。)

レイディア:……あ! 違う、アリエルは違うのよ! 貴族だし、綺麗だし!
      (……! ひょっとして、からかわれてる? ま、そんくらいのがいっか。)

アリエル :ふふ、ありがと。
      (か、かわええ。)

レイディア:……私も、アリエルみたいになりたいなぁ……。
      (別に、言うだけならタダよね。そんなに失礼でもないわよね?)

アリエル :どうして?
      (聞くまでもないけど、それはいいことばかりでもないのさ。むしろ……。)

レイディア:だって、貴族だし、綺麗だし、胸大きいし、勉強できるし、強いし……。
      (アリエルの前だと、強がったってむなしいだけだもん。)

アリエル :ありがとう。でも、レイディアも充分素敵だよ。
      (やはり、貴族が一番先に来るよね。でも、それが……。)

レイディア:もう。やめてよ。アリエルに言われたら、惨めになっちゃうから。
      (私がステキなわけないでしょ! あんまり優しくしないでよぉ……。)

アリエル :そんなことないよ。……あ、話は変わるけど、その服……。
      (上手い具合に話題がつながった!)

レイディア:私の服? ごめんね、こんなボロいのしかなくて。
      (何? これがどうかしたの? まさか、臭ってないわよね……。)

アリエル :素敵な服だな、って思って。
      (ここからが勝負だ!)

レイディア:え? やめてよ、これ、自分で縫ったのに……。
      (よかった。……でも、急に何言い出すんだろ? 不自然なような……。)

アリエル :自分で!!!?
      (不器用なレイディアの作とは思えないが……平民の服は自作なのか!?)

レイディア:ああ、うちって、お母さんいないから。
      (そっか、いくら完璧超人でも、貴族だもんね。使用人が作るわよね。)

アリエル :そうだったよね。でも、普通の服に見えるけど。
      (ということは、時間をかけたということか?)

レイディア:私、不器用だから、毎日ちょっとずつやって、1ヶ月かかったけど……。
      (……お母さんのこと、言ってないわよね。……酔って話したのかな?)

アリエル :そ、それは凄いね。よかったら、昔僕が着てた服と交換してもらえないかい?
      (正解。さあ、ここから大逆転だ!)

レイディア:……な……う、嬉しいけど、何で?
      (私が着られそうってことよね。でも、今の流れで、何で交換?)

アリエル :ああ、遠縁に、平民の手作りの服をほしがっている子がいてね。
      (僕ではサイズが合わないから、これが精一杯の言い訳だ……。)

レイディア:……?
      (……は? なにその特殊極まりない状況?)

アリエル :僕は体が大きくなるのが早かったから、あの服はもう着られないし。
      (おごられるの好きみたいだから、これはプライドには障らないはず!)

レイディア:……でも、もらえるのって貴族の服でしょ? 私なんかのでいいの?
      (私のプライドの高さを見越して、そんな見え透いた嘘を……。)

アリエル :ああ、もちろんさ。
      (ふふ。君じゃなきゃダメなんだよ。)

レイディア:……ありがとう!! 大事にする!!
      (なんていい人なの!! さすがは完璧超人ね!!)

アリエル :もう1着ある?
      (無下に断らないあたり、すごくいい子だなぁ……。よし、あと1着も。)

レイディア:うん。あと1着だけ。
      (もう1着も!? マジで!?)

アリエル :そっちもお願いしていい?
      (2着目は、それほど難しくないはず。)

レイディア:うん。本当にいいの?
      (マジいい人すぎるし……。)

アリエル :ああ。
      (ああ、この無垢さがたまらない……。)

レイディア:じゃ、部屋行って洗って……。
      (これ、もう3日目だし。)

アリエル :待った!!!
      (待った!!!)

レイディア:な、なに!?
      (急に何? ていうか、アリエルでもこんなに慌てることあるのね。)

アリエル :今ここで着てみてほしいな。服はここにあるからさ。
      (自然に。そう、自然に脱がせるんだ。洗濯なんてさせてはいけない。)

レイディア:わかったわ。
      (まあ、もらうものもここにあるしね。サイズ合わせといた方がいいし。)

G   M:無事、着ることができます。もちろん、胸がかなり余りますが。

レイディア:こ、高級すぎて似合わないような……。
      (胸でかすぎるだろ! これ何年前の服だよ! まあ、かわいいけどさ。)

アリエル :そんなことないよ。早速、ローディスに見せてくるといい。
      (でも、レイディアのサイズに合わせるのは不自然すぎるからね。)

レイディア:そ、そう?
      (まあ、私だって、どっかで貴族の血引いてるかもしれないけどさ。)

アリエル :今までの服と似たようなのも、別にこちらで用意しておくから。
      (サイズ違いで返品されたんじゃ、水の泡だからね。)

レイディア:そう? じゃ、これは持って帰って洗濯……。
      (まあ、急がなくても、気が変わることはないだろうけどさ。)

アリエル :しないでいいよ。そのまま置いていってくれれば。
      (むしろ、されたら困るのさ。君を止めるためなら、命だって賭けよう。)

レイディア:……ここだけの話、それ、3日目なんだけど……。
      (本当は、ここに来るのも迷ったくらいなんだから……。)

アリエル :ああ、雨が続いたからね。仕方ないさ。晴れたらメイドに洗わせるから。
      (ああ知ってるさ!! だからいいんじゃないかっ!!!)

レイディア:でも、そろそろ止むわ。さすがに、洗濯しないと悪いし。
      (貴族の部屋にこんなの置いて帰るとか、正気じゃないわ。)

アリエル :じ、実は! とても高級なワインを仕入れててね!
      (そ、そうか、レインフィールドの名は……こうなったら!!)

レイディア:!!!
      (酒!!!)

アリエル :すぐに持ってこさせるから、それ、もう1着に着替えてきてくれるかい?
      (よくやった。緊急時にしては、なかなかに自然な流れだ。)

レイディア:でも、まだ雨が……。
      (貴族が高級を自負するワイン! 私が取りに行ってもいいわ。)

アリエル :湿度が高いほうが、香りがわかりやすいしさ。
      (女の子のは、晴れの日の方が好きだけどね。)

レイディア:それもそうね。じゃ、着替えてくるわ。
      (せっかくもらったのに、何で着替えるの? まあいいわ、酒! 酒!)

G   M:レイディアは、あっという間に部屋を出ました。

アリエル :こ、高級なワインをなんとかしないと……。
      (心当たりは1つあるけど、あれは高すぎるね。ははは……。)





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